第1話
――5月中旬。
あれ以来、黒尾とは連絡を取り合っている。及川と同じく無視をすると後々面倒そうなので、随時くる連絡に応えていた。とはいっても、黒尾は及川ほどしつこい連絡はなく、内容も割とまともだ。最初の印象が少々悪かっただけで、すでにそれは拭い去られていた。
黒尾との連絡経由で、夜月が少々ゲームをしていることを知り、いつの間にか彼の幼馴染である研磨とも連絡を取り合うようになった。
この短い期間で交友関係が広がっているのを感じた。
「うぉ」
「ホントだスゲー! 写真でけー!」
部活終わり、片づけをしている最中だ。体育館で東峰、西谷、田中、菅原は月刊バリボーを見ていた。その声に引き付けられ、影山や日向も加わる。
「高校注目選手ピックアップ・・・・・・?」
「今年の注目選手の中でもとくに注目! ってなってる全国の3人の中に白鳥沢のウシワカが入ってんだよ」
日向は白鳥沢と言う単語で、影山が落ちた高校だと思い出す。しかし小さな巨人ばかりの日向は、ウシワカについて全く知らないらしい。
「ウシワカの本名は牛島若利。宮城県内で今トップの選手だよ」
「へえ・・・・・・!」
横から口をはさんで説明すると、日向は感嘆の声を上げた。やがて、じっと牛島の写真を見詰めた。つまり、彼を倒さないと音駒と再戦はできない。
「コラコラ 白鳥沢だけが強敵じゃねーぞ」
盛り上がる選手たちの所へ、今度は烏養がくちをはさんだ。烏養は集めた資料をめくり、他に警戒しなければいけない候補を読み上げた。
「あとは_鉄壁の一言に尽きる――”伊達工業”」
その名前に、3年生と2年生は顔を強張らせた。
「どこよりも高いブロックを誇るチームだ。伊達工には確か、今年3月の県民大で2ー0で負けてるな」
烏養の言葉で気づいたのか、日向と影山が反応を示す。
そして最後に、”青葉城西”。及川率いる青城は去年のベスト4だ。
「チッ」
「舌打ちをするな」
練習試合のことを思い出したのか、田中は舌打ちをし、すぐさま夜月にくぎを刺される。
一方烏養は、菅原や澤村から感動のまなざしを向けられていた。
「とまあ、この辺が『俺的今年の4強』だ。と言ってみたものの、上ばっか見てると足掬われることになる。それ忘れんなよ」
「「オス」」
「そんで、誰にも もう”飛べない烏”なんて呼ばせんな」
「「あス!!」」
気合を入れなおした選手たちは大きく返事をし、泊めていた手を動かして再び後片付けに手を付け始める。その最中、こそっと烏養を揶揄うように夜月は声をかけた。
「なんだ、意外と調べてるじゃないか」
「うるせぇ。んで、これ以外にお前からはなんかあるか?」
「いや。一通り調べたけど、その4校が最重要だと思うよ」
烏養は「だよなあ・・・・・・」と零す。
その時、いきなり大きな音をたてられて開いたドアに全員が目を向ける。そこには慌てた様子の武田が立っていた。
「遅くなってゴメン! 会議が長引いちゃって・・・・・・それで出ました!! IH予選組合せ!」
武田から組み合わせ表を受け取った選手たち全員は、それをみつめる。烏野の区画にいるのは、青葉城西と伊達工業。一回戦を勝ち抜けば、伊達工業と当たる組み合わせだった。選手たちは難しい顔を浮かべた。
「おい さっき言ったこと忘れて無えよな」
烏養が選手らを睨む。
「わかってます。目の前の一戦 絶対に獲ります」
澤村は再び、組み合わせ表を見下ろした。
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