第20話



試合が始まり、日向がサーブを打つ。相変わらず苦手のようだ。
そして旭にボールが回ってくる。


「止めんぞ」

「命令しないでくんない」

「本気で行くっス旭さんっ!!」


こちらも影山、月島、田中でブロックをしようと構えている。
それは凄い音と共に返された。
ブランクあっても、あの強さ。でも、落ちてしまえば意味はない。

もう少しでボールは下につく。誰もがそう思った。
だがそこにスッと手が伸びていた。

ギリギリで上がったボール。それに感動してか田中は号泣している。
夜月も呆気にとられていた。彼は、ボールを繋いだのだ。


「何度打ち返されても、必ず俺が上げるから。だからもう一回、トスを呼んでくれ!! エースッ!!!」


彼らの試合を見ながら、夜月は一年前の出来事を思い出していた。


「カバー!!」

「オーライ!」


セッターの菅原も誰にあげるか迷っているのか、周りを見ている。


「菅原さん! もう一回!! 決まるまで!!」

「ドSだね〜王様」

「あ!?」



影山にそう言われても、菅原はまだ迷っていた。
だから一瞬、眼鏡の人――嶋田の方を見た。


「嶋田さ……」

「スガァーーーーッ!! もう一本!!」


旭が叫んだ。それに反応した菅原は、すぐに旭にトスを上げる。
キュッとバッシュが音を立て、高く飛ぶ。三人も飛んだが今度は止められなかった。


東峰旭は凄い。エースと呼ぶだけある。
しかし、一年コンビも負けてはいない。

いつものように影山のトスを打つ日向。知らない町内会チームや烏養はぽかーんとした。


「ウォい!! 今なんでそこに跳んでた!? ちんちくりん!!」

「ちんっ……ど、どこに居てもトス来るから……です」


はぁ? と、言いたそうな烏養。
おもむろに隣に座っていた夜月に説明を頼むように目を向けた。


「翔陽……日向の運動神経とバネはとてもいい。それに影山の技術を加えて、全力で日向が飛んだ位置に影山がピンポイントでボールを持って行ってるのさ。凄いでしょ?」

「……それ、お前の策で作ったのか?」


だとしたらお前はまだ錆びれてねーな、と付け足す。


「いいや……彼らだ」


錆びれるつもりはないよ、と付け返した。

1セット目は町内会チームの勝ち。
2セット目は日向と影山で少し揉めたが、無事試合は終了した。どちらも町内会チームが勝った。


「とにかくレシーブだ。それができなきゃ始まんねえ。明日からみっちりやるからな!」

「あざしたー!」

烏おう、ストレッチさぼんなよ」


烏養の話を聞き終えると、皆はストレッチを始める。
マネージャーである清水と夜月も片付けをはじめた。


「じゃあ一発シメてとっとと上がれー」


烏養が声を掛けると皆は円陣を組む。


「烏野――ファイッ」

「オース!」


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