第18話



次の日の放課後。
いつも通りに練習を始め、今はレシーブの練習をしている。
そんな時。


「んローリングッサンダァァァ!!」


叫んだ西谷は、レシーブしたあとに何故か回転している。
回転し終えるとどうだ、と言わんばかりにどや顔をする。


「……あ、うん。ナイスレシーブ」

「あはははは!! 普通の回転レシーブじゃねーか! サンダーどこ行った!」

「何で叫んだんですか?」

「クスクス、何今の」

「ローリングサンダー教えて〜!」


影山は普通に疑問をぶつけ、日向は教えてとねだり、月島や山口はクスクスと笑う。


「影山、月島、山口! まとめて説教してやる! そこにかがめ! いや、座れ! 俺の目線より下にこーい!!」

「君がバカなことをするからさ」

「夜月テメェー!! お前も座れぇ!!」


月島たちに混ざってクスクスと笑いながら言った。
怒鳴っている西谷を無視して仕事に専念しようとすると、影山不思議そうに聞いた。


「夜月さんも座んなきゃダメなんすか?」

「あ、バカ!!」


田中がやめるように言ったが、既に言葉は言ってしまった。西谷を見ると暗い顔で固まっており、俯いている。
そこで日向がなにを思ったのか真剣に夜月に言った。


「身長……何センチですか」

「……164だが」


そう言ったのと同時に、西谷と日向が膝からガクリと崩れ落ちた。


「日向―ッ!!」

「おいノヤーッ!!」


どうやらショックだったらしい。
そんなことをやってると、武田がやってきた。自然とみんなは彼のもとへ集まった。


「みんな、今年もやるんだよね!? GW合宿!!」

「はい。まだまだ練習が足りないですから」


最初に答えたのは澤村。
そういえば、そろそろそんな時期か。


「それでね……最終日、練習試合組めました!!」

「……!!」


その瞬間、みんな驚きと嬉しそうな表情をした。
今まで練習試合はあまり組めなかった。2、3年からすればそうれはもう嬉しい事。勿論、一年も主に影山と日向が嬉しそうだ。


「それで! 相手は何処ですか!!」

「東京の古豪、確か通称――"猫"」


猫……となると、烏野と因縁深い音駒高校の事だろうか。
その話はよく聞いていた。


「猫?」

「俺らも話だけは聞いててよ。前の監督同士がライバルで、よく連戦にでたんだと!」


疑問に首を傾げた日向に、田中はそう説明した。


「そうそう! 猫対烏――"ゴミ捨て場の決戦"っつって!」

「それ、ホントに名勝負だったんですか……?」


ネーミングで月島が聞いた。


「当時は結構名勝負だったらしいよ」

「そうなんですか?」

「うん」


月島の隣にいた夜月はそう言った。
月島はあまり興味がないのか、へぇーと受け流す。


「よし! せっかくの練習試合、無駄にしないよう気合入れるぞ!」

「おぉ!」


澤村の言葉でさらに気合を入れる選手たち。
みんなが練習に入っていく中、西谷は申し訳なさそうに澤村に言った。


「大地さん、すみません。俺、練習試合出ません」


「翔陽はいいやつだし、他の一年も癖のあるいいやつらだし、これからこのチームはよくなっていくと思います。俺も此処で、練習したい。けど、ここで俺が試合に出て勝ったら、旭さん無しでも勝てるって証明になるみたいで……嫌です。」


旭さんは、あの日から顔を出さない。
話によれば澤村や菅原ともクラスが違く、それと複雑という事であれ以来会っていないらしい。


「……わかった、でも合宿には出てくれよ?」

「え、でも……」

「ノヤッさーん! もっかい! ローリングサンダーもう一回!!」

「な?」


西谷はいいのだろうかと微妙な顔をした。
困ったように西谷は夜月に助けを求め、瞳を向けた。


「みんな、私たちは君を待ってたんだ。それくらいはいいでしょ?」

「……はいっ!」


西谷は澤村と夜月を見て、いつもみたくニカッと笑った。


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