第16話



すると三年と田中が体育館にやってきた。


「おお〜っ! ノヤっさぁ〜ん!!」

「おー! 龍ーっ!」

「西谷!!」

「チワース」



相変わらずポカーンとしている2人。
それを澤村が気付いて説明する。


「2年の西谷だよ」

「あっ! チワース!!」

「おース」


聞いてすぐに挨拶をした影山。
しかし日向は驚いたようにパクパクと口を開け閉めし、やがて西谷の前まで来ると。


「お……お、おれより小さい……!!?」

「ああ!? てめえ今なんつったァコラァ!!」

「まあまあ」


澤村がそう抑える。


「あっ、ごめんなさっ……あのっ!」

「あ!?」

「身長何センチ……ですか」

「159cmだ!!!」


何故かそこで自信ありげに答える西谷。
夜月が呆れる一方、日向は目を輝かせる。どうやら自分より小さかったらしい。


「お前ら1年か!!」

「オス!」

「さっきのサーブの奴! そこのデカくて目つきの悪い方! お前ドコ中だ!!」

「……北川第一です」

「まじか! 強豪じゃねーか!」


西谷と影山は出身中学の話で盛り上がった。
どちらも強豪中学出身らしい。さすがに夜月は東京にいたため、中学の強豪はわからない。


「あの、西谷さん。なんで烏野に来たんですか? やっぱり鳥養監督の復帰を聞いて」

「いや、俺が烏野に来たのは……」


西谷が溜めるものだから、それなりの大きな理由があるのだと思った影山と日向。
生唾を呑み込み、その言葉を待ったが、出てきた言葉はなんとこれだ。


「女子の制服が好みだったからだ……凄く!!」


拳まで握って言う西谷。
期待を裏切られた二人は、思わず「え」と言ってしまう。


「もちろん女子自体も期待を裏切らなかった! それになんつっても! 男子が学ランだからだ!! 黒のな!!」


興奮気味に語る西谷だが、聞いている二人はまったくもって理解できない。
すると、いきなり西谷は夜月を指さした。


「女子の清楚な着こなし方も良いが……コイツのあえて着崩した着こなしもまた良い!!」

「またその話かい……?」


夜月は周りの女子とは違い、少し着崩していた。
とはいっても目立ったところはなく、女子のリボンを着用していないぐらいだ。

そして西谷は潔子が来た瞬間そっちに走ってってしまう。
相変わらずビンタを貰って。


「喧しいだろ。でも、プレーはびっくりするくらい……静か」


澤村が日向や影山に言う。
西谷がビンタを貰った頬のままこちらへ来ると、とある疑問をぶつけた。


「で、旭さんは? 戻ってますか?」

「…」


三年や二年の皆は、気まずそうに眼をそらした。
そこで澤村が静かに伝える。


「……いや」

「あの根性無しっ!!」

「こらノヤ! エースをそんな風に言うんじゃねえ!」

「うるせえ! 根性無しは根性無しだ!」


西谷の言葉に田中が咎めたが、西谷はさらに叫んで聞く耳を持たない。
体育館を出ていこうとする西谷。


「待てってば、ノヤっさん!」

「前にも言った通り、旭さんが戻んないなら俺も戻んねえ!」


そのまま西谷は体育館を出て行ってしまった。
こればかりはしょうがない。そう思っていると、日向が西谷の後を追い、それを心配に思った三年と田中が、また後を追った。
結果的、残ったのは夜月と影山。そして今しがた来た月島と山口、縁下だけだった。


「……まぁ、俺たちで準備しとこっか」

「そうね。さ、準備をするわよ」


prev back next