第14話



「それにしてもよー。あの優男のサーブ凄かったなぁ。最初からアレやられてたらヤバかったぜ……」


試合終わりの帰り道。
学校に戻った烏野バレー部は体育館を軽くモップ掛けをし、帰宅路を歩いた。
そこで田中が息を吐くように、そんなことを言った。


「さすが影山と同中の先輩ー……アレ? ていうか、影山ってなんで烏野に居るんだっけ?」


その言葉に全員が止まった。
確かに、影山ならもっと強豪の学校へ進みそうだ。


「県内一の強豪つったら、やっぱ白鳥沢だろ?」

「しらとり?」

「白鳥沢学園っていう、県で一番の学校さ。全国でも必ず8強に食い込む」

「ほーっ!」


知らなかった日向に、夜月は短く説明をした。


「……落ちました。白鳥沢」

「落ちた!?」


それぞれに反応を示す。


「白鳥沢から推薦来なかったし一般で受けて落ちたんです。試験が意味不明でした」

「あそこは普通に入ろうとしたら超難関だもんな」


菅原がそう言う。

夜月は東京からこちらへ来るさい、二校の学校を受験した。私立白鳥沢学園高校と宮城県立烏野高等学校だ。
最初は白鳥沢へ行く気だったが、関係の深い烏野へ進むことにしたのだ。


「そんなに意味不明だったか?」

「お前の頭が意味不明だ」

「変人のように言うな、龍」

「へえーっ! "王様"勉強は大したこと無いんだネ〜」

「チッ」


ボソリと思いだしながら言う夜月に田中が突っ込み、またもや月島が影山をたかる。
すると、ふと思い出したように日向が夜月に聞いた。


「そういえば夜月さん! バレーやってたんですか?」

「え?」

「だって、夜月さんのアドバイスとか的確? だったし! 中学とかでやってたんですか?」


目を輝かせて聞いてくる日向。それに夜月は少し困った。

田中はそんな日向に「やめとけやめとけ、何度聞いてもコイツ、やってないの一点張りだから」などという。
まぁ、去年散々二年のとある二人に聞き続けられそう答えたのは事実だが。


「……ま、向こうで少しね」

「向こう?」

「私の出身は東京だからね」


日向は「東京!!」とさらに目を輝かせる。
田中に至っては、一点張りを続けた夜月があっさり答えたことに驚き、露骨に落ち込んだ。
澤村たちは「やっぱりなー」などと言葉を零し、影山はじっと夜月を見た。


「ん? じゃあなんでバレー部入んなかったんですか? 女子バレー部ありますよね?」


日向の、まったく正しい疑問に夜月は苦笑をする。
一年前を思い出しながら、夜月は言った。


「今度はマネージャーをしてみようと思ったんだよ」

「へぇー」


マネージャーという、コート外に立つ存在。
コートに立たずにバレーを続けられる、そんな道に夜月は進んだ。


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