第7話



朝、五時。


「ふぁ〜……」


さすがに朝の5:00は眠い。低血圧にはきつい。

約束通り、夜月は五時に学校へ着くように家を出た。学校に着くと体育館は空いており、彼らがいることが分かった。
体育館の扉を開けると彼らの注目を集めてしまい、夜月は軽くあいさつをした。


「おはよう」

「おはようございます!」

「お、おはようございます!」


一番に反応したのが影山で、つられるように日向が挨拶をした。
田中や菅原は驚き、夜月に駆け寄る。


「低血圧のお前が来るとは思わなかったよ」

「俺が誘ったときは断ったのに……」

「……後輩に頼まれたものなので」


夜月が手を鳴らし、短い時間の練習を有効に活用しようとすると、日向がじっとこちらを見た。
影山や田中は練習に戻っている。


「あの! 名前聞いてもいいですか!」

「あぁ、私は二年の紫炎夜月。よろしくね、日向」

「はい! えーっと、夜月さん!」


元気よく返事をした日向。
好奇心に何故その呼び方か聞くと、田中たちが夜月と呼んでいたためらしい。

その後、彼らは練習に励んだ。
日向は菅原とレシーブ。影山は田中とトスのあわせを。

基本、夜月は影山たちを見ていた。外から彼らを見て、アドバイスを渡す。


「どうっすか」

「んー……」


問いかける影山に一つひとつ、丁寧に伝えると影山はあっという間にそこを改善し、よりよくした。
流石天才と言われるまである。


それから毎日、夜月は早朝の練習に付き合った。けれどかたくなに影山が日向にトスを上げないため、うまくいかない。

そんな日々が続き、今日――木曜。


放課後、もう二人の一年生が来ることとなった。見学、といったところだ。
部活をしていると途中で彼らが来て、澤村が紹介した。


「明日から部活に参加する、月島と山口だ」

「月島です。よろしくお願いします」

「山口忠です。お願いしまーす!」


二人がそう挨拶をする。
次に部員の自分らが自己紹介をした。田中は、どうやら彼らが気に入らないらしい。とはいっても、彼は大抵誰にでも最初にそういう。

順番的にマネージャーが最後になり、清水の後に夜月が言う。


「二年の、紫炎夜月です」

「……」

「あ……」


声を漏らしたのは山口だった。
入部届を受け取った子で、夜月は腰のあたりで小さく手を振った。

片方の、彼よりも長身の一年。月島は夜月を見るなり目を見開いた。けれどそれは一瞬で、次第にその瞳は元通りとなる。
だから夜月は気付かなかった。


「よろしくね」

「よろしくお願いします!」

「……お願いします」


月島は無気力気に言った。
夜月が困ったように笑む一方、彼はそっと目をそらしていた。


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