第6話
キーンコーンカーンコーン――と、予冷が鳴る。
今は昼休み。
夜月は昼ご飯を購買まで買いに行き、飲み物を買いに自動販売機まで行く。
向かっている途中、田中の教室をのぞいたが田中は疲れて眠っていた。早朝五時はきつい。
購買で買ったものを詰めた袋を持って自動販売機へ向かうと、自動販売機をふさぎながら何処かをのぞいている人がいた。
「ちょっと退いてくれないか」
「? ……あ」
声をかけて振り返ったのは、なんと影山だった。
「あ、なんだ。影山か」
「うっす」
影山は軽く会釈をして自動販売機から退いた。夜月は軽くお礼を言って、自動販売機に百円玉を入れる。
出てきたパック入りの飲み物にストローをさし、それを口に含む。
その間影山はじっと夜月を観察しており、夜月は不思議な思いと居心地の悪さを同時に感じた。
ふと、夜月があ、と口を零す。
「そういえば、まだ名前言ってなかったね。私は二年の紫炎夜月、よろしく」
「よろしくお願いします」
軽くあいさつを交わすと、再び沈黙が落ちた。
夜月が影山が覗いていた場所をふと覗いてみると、そこにはレシーブの練習をしている日向とそれに付き合っている菅原がいた。
「昼休みまで練習してるのか……早朝で眠いだろうに」
「みたいっスね。……?」
夜月の言葉で影山が疑問を持った。
早朝の練習を知っているのは田中と菅原のみ。体育館を使用しているというのも、この二人しか知らない。
ならなぜ、彼女が知っているのだろうか。
「朝に練習してるの、知ってるんですか」
「あぁ、知ってるよ。龍に誘われたしね。どうだい? 練習の具合は」
目線を影山に向ける。
彼らの練習の具合を聞くと、彼が言うにはダメダメらしい。日向のレシーブが全くなっていないため、鳥栖をあげないと宣言までしたという。
それに夜月はクスクスと笑む。
「まぁ、レシーブは一朝一夕でどうにかなるものでもないし。日向には頑張ってもらわないといけないね」
まるで経験者のような口ぶりだ。
影山は、日向に目線を戻した夜月を何かを考えるような瞳で見つめた。
「じゃ、私はこれで……」
「あ、ま、待ってください!!」
立ち去ろうとする夜月の腕を、影山はガッシリと掴み引き留める。驚きに夜月
は目を丸くして瞬きをする。
どうしたの、と問う前に影山が口を開いた。
「あの! 練習付き合ってくれませんか!」
「え?」
それは早朝か午後の二人の練習をさしていた。早朝ならまだしも、午後は部活があって物理的に無理だ。
そもそも、自分は選手ではなくマネージャーだ。
「い、いや、マネージャーの私は見てるぐらいしかできないし……」
「それでもいいです! アドバイスとかください!!」
決して引かないとでもいうような勢いだ。
困り果て、どうしようかと影山を見るが、その瞳は期待に満ちている。思わずため息を落とした。
「……わかった。でも、放課後は無理よ」
「ありがとうございます!!」
影山はそう答えると、この場を早々と立ち去ってしまった。
「はぁ……」
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