第2話
入学式が終わり、在校生が教室へ向かう群れの中に紛れて夜月も自分の教室へと向かった。
が、廊下の途中で引き留められた。
「おーい、夜月!」
「あぁ、力。どうかした?」
駆け寄ってきたのは縁下力。同級で同じ部活という事もあり、結構仲が良い。
力はそう言った夜月に呆れた顔をした。
「お前、入学式さぼっただろ」
「よくわかったね、さすが力」
「お前の姿が全然見えなかったからな。たく……なにやってんの……」
はぁ……と溜息を落とす。夜月はそんな力にクスクスと笑う。
「まぁ、いいや。この後は部活の勧誘だから、サボるんじゃないぞ」
「それはちゃんとやるさ。潔子さんにだけ、任せるわけにもいかないしね」
二人は軽く手を振って別れた。
夜月は特進の五組、力は四組。部員の二年で特進にいるのは夜月と力、そして木下だけだ。
部活勧誘はすぐに始まった。
二、三年の人が張り切って勧誘をする群れと、勧誘に流される一年の群れが校舎内に溢れかえった。
バレー部のマネージャーである夜月や清水は派手な勧誘はしないで、自ら入ってくる一年を待っていた。
「ねぇツッキー、バレー部ってどこだと思う?」
「知らない。探してくれば」
そんな群れの中に、二人の背が高い一年はバレー部を探していた。
もう一人より背の高い一年は、人ごみに嫌気がさして入部希望を片割れに託すとスタスタと端のほうへ行ってしまう。
託されたほうは二枚の入部希望紙を持つと、近くにいた先輩らしき人に声をかけた。
「あ、あの!」
ん? と振り返った女子生徒――夜月――は背の高い一年を見上げた。
その子は困ったように尋ねる。
「あの、バレー部って何処かわかりますか?」
「……男子バレー部か?」
「は、はい!」
頷いたその子。
夜月はその子の手元を見た。確かに入部希望の紙が握られており、夜月はそれを預かる。
「それなら預かるよ。私はそこのマネージャーをしててね」
「そうなんですか? それじゃ、お願いします」
「はい、ありがとう」
おずおずと丁寧に渡してくるのに合わせ、夜月も似せていった。
微笑して受け取った夜月にその子が一例をする。一例をすると、その子は足早に群れの中へと帰っていった。
夜月はまた違う方へ足を向け、バレー部のほうへ向かう。
既にそこには三年と同級生の田中がいた。
「あ、夜月ちゃん。お帰り」
「ただいま戻りました。希望者、二人です」
貰った紙を持ち上げ、仰ぐようにチラつかせた。
「ナイスだぜ夜月!」
「となると、今んとこ4人か。少ないな。昔は多かったのに」
田中に続け、言葉を繋げたのはキャプテンの澤村だった。
四枚の紙を見つめ、澤村はそう言葉を零す。
「こっから増えるって、大地。なぁ?」
「まぁ……多分?」
「多分かよ……」
菅原は少し肩を落とす。
「潔子さん、今日も美しいっす」
あきずに今日もそういう田中。それを呆れながら夜月は眺める。
清水は田中の言葉を無視をし、教室へ戻って行く。
「ガン無視興奮するっす」
「はぁ……」
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