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Act.13




先に進んだスーリは途中で弓矢を回収し、馬に乗っていたルシタニア兵を討ち取り、白い馬で移動していた。

とはいっても、アルスラーンの居場所はわからず、噂や生きそうな場所を考えやみくもに探すしかあるまい。
すると、視界に馬で移動する一人の少年が目に入った。


「あの少年は…」


茶髪のアルスラーンと同じぐらいの少年。

あの少年は見たことがある。
確か…。

スーリはその少年の後を追った。


_
__



「ナルサス様、エラムです、今戻りました。」

「エラムか、ご苦労だったな」


隠れ家についたエラムはナルサスとダリューン、アルスラーンにエクバターナで来たことを説明した。


「エラム、姉上は…」


アルスラーンは話を聞いた後、すぐにスーリの所在を聞いた。
エラムは瞳を閉じ、首を横に振る。


「いいえ…。どうやら、エクバターナから脱出したらしいですが…」

「なんとか逃げられたか…」


ナルサスがポツリとつぶやく。
アルスラーンやダリューンも表情を暗くする。


すると隠れ家の近くで馬の足音が聞こえ、すぐそばで馬から降りる音がした。
アルスラーンやそれを守るダリューンは奥へ下がり、ナルサスは剣を握って入り口付近に立った。



フードを被ったスーリは少年が来たであろう場所に足を進める。
すると背後から剣を向けられ、下手に動けなくなった。


「女か…貴様、何者だ」


この声…何年ぶりに聞いただろう。


「ナルサス…?」


名を呼ばれたナルサスは訝し気な顔をした。
スーリは振り返るとかぶっていたフードを取った。

ナルサスの目の前には、妹分であるスーリ。


「スーリ!?」


「ナルサス!」


スーリは嬉しそうに声をあげた。
剣を収めたナルサスはすぐさまスーリの両肩を掴み、ズイッと顔を近づける。


「なぜおまえが…!? いや、どうやって…」


あまりのことに動揺したナルサスにスーリはクスリと笑った。
その直後_。


「姉上!!」


奥からアルスラーンの声。
振り返れば、追っていた少年とダリューン、そして弟のアルスラーン。


アルスラーンは薄っすらと涙を浮かべ、姉の腕の中へ飛び込んだ。


「姉上!! ご無事で…よかったです!」


腕の中に飛び込んだアルスラーンの力によってスーリは尻もちをついた。
アルスラーンは離すまいとスーリの腹部にがっしりとしがみつく。

そんなアルスラーンの頭を優しく撫でる。


「貴方も無事でよかったわ…アルスラーン」


微笑むスーリ。
そんな二人をナルサスやエラムは見守った。


「姫様ッ!!」


立ち上がるとダリューンが奥からやってきた。


「ダリューン…!」


ダリューンはスーリに近寄ると肩を引き寄せ、力ずよく抱きしめた。
その強さから彼の心配していた気持ちが伝わる。


「ご無事で…。姫様」

「…えぇ。ありがとう、ダリューン」


黒衣の騎士の背に、そっと腕を回す。
ダリューンが離れると彼女の目に入ったのは追っていた少年_エラム。


「エラム!」

「お久しぶりです、スーリ様。ご無事で何よりです」


エラムはそう言って微笑んだ。


「姉上はナルサスやエラムを知っているのですか?」


二人を知っていることに疑問を持ったアルスラーンはスーリにそう尋ねた。


「えぇ。ナルサスは私の師で、よく会っていたからエラムとも昔からね」

「よい弟子を持った私は幸せだな」


ナルサスはスーリの頭をなでる。
何年振りかのナルサスの再会に、スーリは嬉しそうに目を細めた。



その後、スーリは今までの経緯を話した。

ギーヴのことは名をださず、「助けてくれた人」と言って。
意図的ではない。自然とそういった。


「何より、お前が無事でよかった。スーリ」

「ありがとう、ナルサス」

「姫様、どうか御休みになってください。お疲れでしょう」

「そうだな…スーリ、あまり長くは休めぬが少し眠れ」


ダリューンとナルサスがそう言う。
それにアルスラーンやエラムも賛成する。

スーリはその言葉に甘えることにした。


「わかったわ」

「姉上! こちらへ」

「武器はお預かりしますよ」

「ありがとうエラム、アルスラーン」


武器を預けたスーリはアルスラーンに引かれ、奥へと進み体を休めることにした。


その間にナルサスはカーラーンについての作戦を練った。


-13-


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