異能の鏡文字


てくびからながれる あかい けつえき
ふんすいからながれる みず に てくびを ひたせば その まっかな せんけつは とうめいにまじって きえていく


ぼくは きょうも ひとりぼっち



「深海」

だれかがぼくをよぶ

ぼーっとするあたまをどうにかうごかして

みずからおきあがる

ぬれたふくに かぜがあたって ひんやりとする


「私、1年の苗字、よろしく」

そういって きれいなかおをした かのじょは ぼくに てをさしだす

それでもそのまっしろな さしだされた て を
にぎることは できない

だってみんな ぼくを うらぎる

ひとりぼっち


「...」
「水って気持ちいいよね。私も好きだよ」

あきらめたように すこしかなしそうにわらった かのじょは さしだした てを ゆっくりともとに もどし ふんすいの みずたまりに あしをいれた


「くつ ぬれちゃいますよ」
「いいよ別に」
「つめたいですよ」
「そうだね。風邪ひきそう」
「なら」
「ねえ、自分を傷つけて楽しい?」
「...」



ぼくのてくびにある いくつもの きず に めをむけた かのじょは つめたいしせんを まっすぐ ぼくに むける



こわい


こわい


つめたい




「保健室行こ。今なら保健医もいない、私が消毒してあげるから」

「でも」

「それに風邪引いちゃうよ。ジャージ零のでも借りてきてあげるから着替えよ」

「れい...?」

「あんた仲良いでしょ、零と」

「しってるんですか」

「嫌だな、三奇人知らないとか無いでしょう」

「きじん」

「大丈夫、私も奇人だから」

「えっ」

「ん」

「ふふふ、へんですね、じぶんで きじん、だなんて」

「何でよ、良いじゃない奇人。凡人なんかよりよっぽど魅力的じゃない」

「...みりょく?」

「そうよ。深海だって、凄い魅力的。泳げない人魚姫みたいで神秘的、綺麗」

「ぼくがおよげないこと しってるんですか」

「知ってるわよそれ位」

「ものしりですね」

「ほら、この、タオル使って良いから。保健室行こう」



そういってもういちどさしだされた しろいてを


こんどは しっかりと にぎった







それからぼくは にどと じぶんを

きずつけないことにした


そして ぼくは

ひとりぼっちをやめた