帰路
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『別れよう』──そう言われたのは、ちょうど二十四時間前だった。
 いつもの帰り道で、彼が呟いた言葉。もう、お互いに言わずとも分かっていた。互いの心は既に全く別のところにあるということを。知っていたから、すんなりと受け入れられた。
 夕焼けに染まる下り坂。昨日までは二人の影が、今日は一人。何だろう、変な感じ。別に、一人で帰るのが初めて、という訳でもないのに。
 宙ぶらりんの手、気になって両手で鞄を持つ。と、違和感が消えた。肩が寒い。早くお家へ帰ろう。
 広い路地、昨日までは一度ここで止まっていた。そのまま手を振ることもあれば、月がはっきりと見えるまで喋っていたこともあった。今日からは、立ち話する相手も、手を振り挨拶を交わす相手もいない。
 その感情をなんと言うべきか。知っていたのに押し込めていた気持ちが一筋、頬を滑った。
 寂しい、さみしい、淋しい。一人で帰る辛さを、二人で帰る暖かみを、同時に知ってしまった。一言も発することなく、その代わりに、何滴かの雫がアスファルトの色を濃くさせた。
 早く帰ろう。止まっていた足を叱咤し、早足で角を曲がった。
 夕焼けが暖かすぎて、これ以上そこにはいれなかった。









帰路
(寂寞の夕方、胸に木枯らしが突き刺さった)






H23/2/2
失恋っぽいお話。きっと。










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