キスを、された。正確には唇と唇とが触れ合って一瞬で離れて。けどあぁ、やっぱりこれがキス、なんだ。自覚せざるをえない。
別にファーストキスではない。ただ、背後から声がかかって、だから振り向いて。そのタイミングで唇が降ってきて。心臓に悪いったらありゃしない。
顔と顔の距離が出来て、得意気な表情をした相手がはっきりと見えた。
「ごっそさん」
悪びれた様子もなく、いつも薄い表情にはっきりとしたニヒルな笑みが浮かぶ。どうして私はこんな性悪男を好きになってしまったのか。疑問が浮かんではすぐに割れる。嗚呼、私の疑問はシャボン玉程度なのか。
くるくると回る思考回路、顔に溜まる熱、頭の中がオーバーヒートを起こしてショート寸前。そんな私を見て彼は小さく笑う。
「何? 興奮してんの?」
二重の意味で真っ赤になった私の顔は、さぞかし酷いことになっているだろう。
彼はそれさえ気にも留めず、くい、と私の顎に指を添える。手玉に取られているようで、釈然としない。
「そしたら、もっと凄いことをし」
「いい加減にしろ変態!!」
私の右手は、鮮やかに空を切った。乾いた音がしたらほら、彼の左の頬は私と同じ真っ赤に染まる。
思い通りにはさせません
(もういい! あんたみたいなのと付き合ってたら保たない!)
(ふーん。けど、この間も同じこと言ってなかったっけ?)
(……!)
(H23/1/9 元・拍手お礼)
変態っ、変態っ!
こんなのが実際にいたら困るっつーの! ってキャラが結構好きだったりします。