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興味なし


最近の荒神は「雷蔵兄さんが誘拐された」という話でもちきりだ。
それに対してある者は届いた暗号文の解読に励み、ある者は誘拐された事実を隠すための工作をしていたり、ある者は内心喜んでいたり、ある者は全く興味がなかったり、と反応は様々だ。
その中でも荒神藍蘭は一番最後の「全く興味がない者」に分別される。
雷蔵兄さんと親しかった者の中には泣いたりしている者もいたが、藍蘭はその姿にも心動かされることなく、「これで荒神つぶれたりせんかったらええわ」というぐらいの気持ちであった。

「それにしても、皆大変そうやなあ」

本家ではバタバタと皆がそれぞれの事に駆け回っている中、藍蘭は離れで百緑と二人、茶をすすりながらそんな事を言う。

「そんな他人事みたいに……」

その言葉に苦笑いをしながら百緑が答えた。
しかし藍蘭は「他人事やし」と冷たく言い放つ。

「一応家族なんですから他人事というのは…」
「他人事やひ、と、ご、と。荒神の人らを家族やなんて思てへんし」

それでもくってかかる百緑に躊躇い一つなく藍蘭は言う。
藍蘭にとっての『家族』とは、前世で死に別れた紅蘭だけなのだから仕方がないとも言えるが、百緑はもっと仲良くしたら良いのに。と内心呟いた。
口に出さなかったのは、これ以上言っても藍蘭は同じことを言うだけだろうと判断したからだ。
長年一緒にいるとそれぐらいの事は分かる。
百緑はため息を一つこぼして、まだ少し熱いお茶をすすった。

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