災難な休日
今日は蒼天は仕事で、椿組でダラダラする気分でもなく、その上仕事も特になし。
こんな日は商店街をぶらりと歩くぐらいしかやることがない。
暇だなぁ、と思いながら豹徒は商店街を練り歩く。
歩いて歩いて、ふと立ち止まった。
電気屋だ。
しかもテレビを置いてくれている。
やったー!と内心で子供らしく喜び、テレビに駆け寄る豹徒。
家にもテレビはあるのだが外で見るというのが楽しいらしい。
ちなみに現在写っているのはNNNのニュース番組だ。
人気キャスターの八重が明るい口調でブラックなニュースを読み上げている。
それを見て、「今日はここで時間潰すか!」とテレビの前を陣取る豹徒。
親代わりである真昼が毎日ラジオを聴いているせいか、すっかり豹徒も八重の
ファンなのだ。
しかし残念ながらニュースはほぼ終盤に差し掛かっていたようで、ものの一分
で八重が
「これでお昼のニュースを終わりまス☆」
と終わりを告げてしまった。
「えー!もうかよ!」
テレビに向かって理不尽に文句を言う豹徒だったが、テレビは無情にも次の番組に移ってしまう。
豹徒はつまんねーのと吐き捨てて、再び歩き出そうとした。
だがそれはぐらりとした眩暈によって遮られる。
あまりの眩暈と吐き気に口元を抑えて目をつぶる。
立っていられずに、そのまま膝をついた。
十秒ほどその体制でいると眩暈と吐き気は収まり、まだ少しふらつくがなんと
か立ち上がる。
そしてテレビを見て、豹徒は驚愕した。
先ほど終わったはずのニュースが、再びテレビに写っているのだ。
しかもキャスターは八重ではないどころか、豹徒が見たこともないキャスターで。
更にそのキャスターは「本日も荒川デモが行われており」と八重とは違う、業務的な口調で告げている。
「……はぁ?」
思わず豹徒は首をかしげた。
荒川デモと言えば聞き覚えがある。
最近勉学を教えてもらっている狼次郎から聞いたのだ。
「(あれって確か70年くらい前の話じゃねえの……?)」
豹徒は更に首をかしげて考える。
しばらく考えて「昔の番組でも流してんのかな」と無理やり自分に言い聞かせる形で結論づけた。
「(……、今日は帰ろ)」
そして豹徒は街の違和感を感じながら全てを無視し、不安を取り除くために家へと走り出していた。
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