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お守り折り紙


明日の夜、奇襲作戦が行われる。
今現在の状況は、メンバーはまだ決まっていないが少なくとも転坂莉子、柏原櫁、亀頭愛紅の三人を中心として編成されることは確定しているというものだ。そして当然妖怪に恨みのある塾生や、目立ちたい、良いところを見せたい塾生、活気盛んな塾生がこぞって「我こそが」と奇襲隊に立候補し、塾内は大変騒がしい。
そんな中、鹿葦津千代は白鷺塾内の自室で静かに黙々と折り紙を折り続けていた。

「皆が無事に帰ってきますように……」

呟きながら願いを込めて、守りのまじないをかけてもらった折り紙に線をつけていく。
折り紙は色は違えど、全て鶴の形に折られている。しかもかなりの枚数で、目的を知らない者が見れば千羽鶴でも作るのかと勘違いするほどだ。
それもそのはず。これを千代は奇襲隊が編成されると聞いてから今までの間、休みもせずに折っていたのである。
なぜ鶴なのか、というと折り紙の得意な千代が最も得意としている形が鶴なのだ。三年の間に塾長の白滋から何度も何度も教わってきた甲斐あって、今では不器用な千代でも一分もかからずに作ることが出来る。
喜んでくれたら良いなと思いながらせっせと手を動かしていると、開けっぱなしの扉から白滋が覗いていた。

「鷲さま?」
「鹿葦津さん、入っても良いですか?」
「えっ、あっ、もちろんですっ!」

何か用だとは分かっていたが、まさか入ってきてくれると思っていなかった千代は慌てて白滋の分の座布団を用意する。

「では、失礼しますね」

そこに座った白滋はつい先程まで千代が折っていた鶴を一羽手にして、数秒見つめた後、にこりと千代に微笑んだ。

「とても上手に出来ています。上達しましたね」

言いながらよしよしと千代の頭を優しく撫でる白滋。どこか失敗してしまったところはないかな、と不安で緊張していた千代は褒められた事と頭を撫でてもらった事が嬉しくて、少し誇らしくて、照れで赤くなりながら小さくありがとうごさいます、と返した。

「ですが、」

数回撫でた所で白滋は手を止め、少し厳しめの口調と顔で続ける。

「全く休憩を取らずに折るのは感心しません。あまり続けすぎると、体にもよくありませんし、少しずつ鶴が汚くなってしまいますよ」
「は、はい……」
  
注意をされて、今度はしょんぼりと項垂れる千代。それを見て、白滋はもう一度だけ頭を撫でて口を開く。

「まだ明日の夜までにはまだ時間があります。焦らなくてもこの速さなら間に合いますよ」
「……!はいっ!」

千代が立ち直ったのを確認して微笑むとそれではこれで、と白滋はおもむろに立ち上がり出口へと向かった。お見送りをしようと、同じく千代も立ち上がる。歩いて三秒程度の出口へ着いてから、千代は行ってしまおうとする白滋を呼び止めた。

「鷲さま、ありがとうごさいましたっ」
「どういたしまして。頑張りすぎないよう気を付けるんですよ」
「はいっ!」

二言三言言葉を交わした後、白滋が見えなくなるまで部屋から見送り、再び折り紙の前へと戻ってくる。先ほど白滋に言われた事を思いだし、多少の休憩を取って鶴作りを再開した。



「これで、最後の一枚っ……!」

あれから一時間半程経った頃。ようやく用意していた特別製折り紙が残すところ一枚となった。最後の一枚を特別丁寧に折って、折り終えた鶴の上へと重ねる。
塾生だけでなく、式神の分まで作ったので大変な量になったが、あとは明日の夜までに渡すだけだ。

「お守り程度だけど、皆を守ってね」

端正込めて作った鶴たちにそう呼び掛けて、早速明日の朝から渡しに行こうと千代は寝る準備をし始めた。

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