昼寝からの目覚め
ぱっと唐突に、目が覚めた。まず目に入ったのは茶色。その茶色が机やということすら理解するのに数秒かかった。ゆっくりと体を起こして周りを見回す。ここは教室で、ぽつぽつと席が空いてるけど、教室にいる奴全員が机に突っ伏していた。
……どういう状況や?とりあえず周りはほっておいて、さっきまで何をしていたのかを思いだそ、とまだ少しぼんやりしてる頭で記憶を辿る。
確か紅蘭と通りを歩いてて、突然反荒神の奴に出くわして、そのまま交戦して…………紅蘭と?うちはまだ、紅蘭を見つけてへんのに?
ゆっくりと思い出そうとしたけど、最初から決定的におかしなことに気付く。そこからはぱたぱたとドミノ倒しみたいに今まで何をしてたんか、順繰りに思い出せた。要するにあれは夢やった、ということらしい。
でも、夢やのに痛みがあった。夢にしては全部自分で選択して行動できた。夢のはずやのに、あの紅蘭は本物やと、勘は言う。
そんなおかしな確信を持ってる割りには紅蘭の今の顔も、名前も、どこに住んでいるのかも、紅蘭を特定できそうな情報は何もかも思い出せへん。全体的に思い出せないいつもの夢とは違って、ピンポイントにその事だけ 思い出せへんのは何なんか。どう考えても普通の夢やないけど、それ以上の事は推測しても、そんなに頭が良い訳やないし全く分からんかった。
まぁ、別にあの夢が何やろうとうちのやることは変わらない。確か紅蘭は、三年前に天照神国に来たって言うてたはず。もう既に来てるんか、まだなんか。分からんけど、とにかく今年中に紅蘭は天照に移り住んで来るらしい。となれば、うちがせなあかんのはとにかく人脈を広げる事。今までは有名になる事を重視してたけど、これからは人脈を広げるんを重要視せな紅蘭は見つからんやろう。何てったって紅蘭、ほとんど覚えてへんもんなぁ……。
いくら知名度を上げても、『荒神藍蘭』の名前だけを見ても、紅蘭はきっと思い出してくれはせんやろう。せやから人脈を広げて、色んな人と仲良くせな見つかる可能性は格段に下がる。あんまり他人と仲良くするんは好きやないけど、これも紅蘭を見つけるためやと言い聞かせるしかない。
まずは、クラスメイト全員と仲良くならんとなぁ……。
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