小説 | ナノ


銅像爆発計画


ここは2017年の西京都。荒神雷蔵が西京を支配し、好き勝手している世の中だ。
その一つとして、雷蔵は自身の銅像をいくつか作らせた。その大きさは様々で、大きいものは5m近く、小さいものでも等身大程の大きさである。
椿組構成員であるクロム・トリジェミニはその銅像の一つを子供が悪戯を企む時の笑みを浮かべながら見上げている。クロムはこれからこの銅像を破壊しようと目論んでいた。
計画が決まったのは一週間前。クロムの

「あの銅像、ぶっ壊そうや」

という言葉から始まった。
その言葉に三つ子の姉であるノエルは驚きと呆れで言葉を失い、三つ子の兄であるゲーネは親指を立てて非常に乗り気、という真逆の反応をする。

「めっちゃおもろそうやし、やろーやノエルねーちゃん!」
「せやせや!荒神の奴らのアホ面見れるかも知れへんで!」

クロムとゲーネは、あまり乗り気ではなさそうな反応を見せたノエルをなんとか引き込もうと騒ぐ。
しかしノエルは特に反対する様子もなく、ため息をつきながらも協力することを了承した。クロムもゲーネも面白そうな事に目がない事は重々承知しているし、一度その気になると止まらないと言う事もこの三年間でよくわかったからだ。
さっすがノエルねーちゃん!と囃し立てる二人を宥めて、ノエルは口を開いた。

「ほんで?どないな計画立ててるん?」
「うちの異能って金属爆発やろ?あれも金属やし爆発できへんかな〜って」
「……。その後は?」

突っ込みどころ満載だったが、いつものことなのでノエルはスルーし続きを促す。

「そこはノエルねーちゃんとゲーネにーちゃんに任せた!」

つまり何も考えていない、と言うことだ。思わずノエルは本日二度目のため息をついた。

「というかあんなでかいもん爆発させたらどんだけの被害が出ると思てんの……」
「運が良かったら荒神の奴らも吹っ飛ばせるかな思たんやけど……あかん?」
「デモの人らも巻き込むやろ」
「えー、ほんならどないしたらええ?」
「せやなあ……」

クロムの丸投げな質問に顎に手を当ててノエルは考える。数秒唸って、ノエルの頭に一つの案が浮かびあがった。


そしてノエルから聞いたその案を決行するのが、今日だ。クロムは変わらず黙って笑顔のまま、銅像を見上げてノエルからの合図を待つ。そして見上げはじめてから十秒も経たないうちに、銅像の三ヶ所から突然小さな金属が発生した。それがノエルとクロムの間で決めた合図だった。
金属が生えてきてすぐにクロムは指をパチンと鳴らす。そして一層笑みを深くして大きく叫んだ。

「爆発せぇっ!」

次の瞬間、銅像から生えた金属が一斉に爆発する。爆発音が辺り一帯に響き、爆風は煙を撒き散らしながら辺りの人間や物をなぎ倒していく。もちろんクロムも吹っ飛ばされたが、受け身を取ってすぐに立ち上がった。
爆発で発生した煙は少し離れた所にいるゲーネが操っており、煙は晴れることなく辺り一帯に蔓延している。そのせいで視界は悪いが、ノエルが立てた計画通りクロムは悲鳴をあげて散り散りに逃げ惑う人々に混じって走り出した。向かう先にはちかりと光る小さな宝石がある。ノエルが目印に、と置いておいてくれた宝石だ。
そこまで走ると、初めて見る大型バイクとそれに跨がるゲーネがいた。ゲーネはクロムの姿を確認すると、煙を操っていた手を止めてヘルメットをクロムへ放り投げる。クロムはそれを軽くキャッチして、急いで被り後方の席へ飛び乗った。しかしゲーネにしがみつくのは気持ち悪いと思ったので、とりあえず肩を掴んでおく。

「ちゃんと捕まりぃや!安心せぇ、お前の胸はない!」
「胸は関係ないやろ!!あとで覚えときや!?」

文句を言いながらも仕方なくゲーネにしがみつくクロム。それを確認してすぐにゲーネはエンジンを入れ、発進させた。人混みを避けるために路地から別の道路へと出る。しばらく走って追ってがいないことが分かるなり、クロムはおもむろに高笑いをし始めた。

「うぉっ!いきなりなんやねん!耳元でやかましいわ!」
「せやかてゲーネにーちゃん!警備員のアホ面見た?めっちゃ面白かったで!」

そう言った後もあーっはっはっ!と女性らしさの欠片もない豪快な笑いをするクロム。そのテンションとやかましさにはゲーネも思わず苦笑いしてしまうほどだ。
ひとしきり笑ったあとクロムはそういえば、と何事もなかったかのように切り出してくる。

「なんや」
「ノエルねーちゃんは?あとこのバイクどないしたん?」
「ノエルねーちゃんは別のバイクで一足先に帰ったで。このバイクはパクってきた!」
「なーんや、そうなんかぁ。そんなら壊しても大丈夫やな!」
「いや、爆発させんなや!?」
「な、なんでバレたん!?」

図星をつかれて焦るクロムだが、クロムの能力と性格を少しでも知る者なら誰でもゲーネと同じようにツッコんだだろう。なのでゲーネは即答でバレバレや!とツッコむと、今度はそんなアホな!と返答してくる。そんな漫才のようなやり取りは、途中で追い付いたノエルに止められるまで途切れることはなかった。

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