五時限目は眠いもの
弁当を食べ終わり、胃が消化真っ最中な頃。
太陽がてっぺんに昇り一日の中で一番暖かい時間帯。
先生の淡々とした教科書の解説。
この三拍子が揃う五時限目はとても眠い。寝ると後々が大変なのはわかっているのに、どうしても船をこいでしまう。こんなことなら昼休みに少しでも寝ておけば良かったと後悔するも後の祭りと言うやつだ。
なんとなく気にななってちらりと前の方の席にいるリリーを見ると、案の定リリーも船をこいでいる。先生にはまだバレていないようだけど、あれじゃそのうちバレそうだ。
内心はらはらしていると、リリーの隣の玄風君も気がついたらしくとんとんとリリーの肩を軽く叩いた。それで目が覚めたよくで、リリーは照れ笑いをして玄風君に小声でお礼を言う。こういう時、隣の席なのがちょっと羨ましくなる。
二人から目をそらすように黒板を見ると、黒板の右半分は既に文字で埋まっていた。慌てて板書をノートに写していく作業に戻り、シャーペンを動かす。
シャーペンを動かしたり、黒板を見るために頭を上げて、ノートを書くために下げて、という作業を繰り返しているうちに眠気が薄れてきたようで、さっきよりも意識がしっかりしてきたような気がする。しかしそう思ったのも束の間、半分まで写し終えた辺りで、唐突に強烈な眠気が襲ってきた。なにも考えられなくなって目を閉じそうになるが、必死に逆らって咄嗟に手の甲にシャーペンをそこそこ強めに刺した。その痛みでなんとか意識を保つ。
眠気に勝てた事に安心して小さく安堵のため息をついていると、教壇の方で大きな物が倒れる音がした。驚いて教壇を見る。そこにはさっきまで何の問題もなく、ましてや具合が悪いとかそういう素振りは全く見せていなかった朝倉先生が倒れていた。
それだけでも驚くのに、もう一つ驚くことがあった。僕を除いた教室にいる人全員が机に突っ伏しているのだ。さっき起こされていたリリーや、そのリリーを起こしていた玄風君も、普段授業中に寝るなんてことはしない天音やサツキまでその有り様だ。
ひやりと背中を冷たい汗が流れる。慌てそうになる思考を押さえるために深呼吸をして、落ち着いて朝倉先生の呼吸を確認する。顔に耳を近づけると規則的に空気を取り込んでは吐き出していることが分かった。再び安堵のため息を盛大につく。だけどまだ完全に安心は出来ない。朝倉先生は大丈夫だったが他の人もそうだとは限らないからだ。全員を確認するのは大変だけど、人命に関わるかも知れない。なので右端の人から順番に、全員の呼吸を確認していくことにした。
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