私の力は他がために
佐久人ちゃんが、亡くなった。別行動をしていた時に「荒神と銃撃戦になっている」と無線で連絡が来たから急いで向かった。だけど、そこにいたのは荒神とおぼしき人の死体と、血だまりに沈みながらも満足そうに微笑んでいる佐久人ちゃんだった。
急いで脈を確認するも何も感じない。脈の場所を間違えたのかも知れないと思って、心臓に耳を当てる。鼓動の音は、聞こえなかった。そう分かった途端に涙が溢れてきた。この力を人のために、誰かを守るために使おうと誓ったのに。守れなかった、どうして、私がこっちに行っていれば、私が一緒に行っていれば、そもそもこんな危ない場所に連れていかなければ、佐久人ちゃんは
「勍子ちゃん!!」
唐突に無線から佑人君の声が響いた。ハッとなって震える手で無線を取り、なんとか一言だけでも返事をする。どうやら佑人君は何度か私を呼んでくれていたみたいだった。そのせいか、私の声のせいか、それともその両方のせいか、何も聞かずに
「帰っておいで」
とだけ言ってくれた。正直に言うとまだ認めたくなくて、言えそうにもなかったからその心遣いは嬉しい。
銃創と血だらけの佐久人ちゃんを抱き上げる。その体温はまだ暖かくて、もしかしたら。なんて考えてしまう。だけどやっぱり息はしていなくて、また涙が溢れた。
しばらく歩いて、佑人君が待っている場所へとたどり着く。すぐさま佑人君が走りよってきて、佐久人ちゃんを抱き締めた。私が帰ってくる前から泣いていたようで、目は既に充血して真っ赤になっている。
「ごめんなさい……、私のせいよ。こうなることも考えて行動してたらっ……!」
改めて自分の不甲斐なさを感じて奥歯を噛みしめた。けれど佑人君はそんなことはない、と言うように大きく首を振って否定する。その優しさにまた泣いてしまって。その日は二人でわんわんと泣いた。家の近くに埋葬して、簡素ながらもお墓を立てたりしながらも泣いて泣いて。翌日になっても佐久人ちゃんがいないという現実にまた泣いて。そんなことを一週間ぐらい繰り返した。
そして先に立ち直ったのは、佑人君だった。まだ泣いている私の部屋を訪れて、宥めてくれながら真っ直ぐ私の目を見つめる。その目には決意が籠っていて、とても力強かった。
「一週間泣きながら考えたけど、やっぱり俺はねぇさんの望んだ平和が訪れるまで折れることはできないよ。だから俺は出来る事をしてく。勍子ちゃんはどうしたいか、心が落ち着いたら教えて?」
微笑みながら佑人君は言う。私がしたいこと。そんなことは佐久人ちゃんが亡くなった時から決まっていた。涙に濡れた目を勢いよく擦って、そのまま立ち去ろうとする佑人君の袖を掴む。そして今度は私から、真っ直ぐと佑人君の目を見つめ
「私も、戦います」
そう言いきった。
そうよ、佑人君だけは守りぬかなきゃ。佐久人ちゃんのように死なせはしない。絶対に、私の命に変えてでも。
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