いたみ




王宮から大きな炎が吹き上げた。あそこでは先程ロメオさんのバリアを駆け上がったルフィとローくんが戦っている筈だ。見上げた空に見える強靭な糸の檻はもう随分と狭くなっていた。彼方に見えたのはドフラミンゴと対峙するルフィと……腕に抱えられたローくんの姿だ。ぞわり、と背中に駆け上がるものを感じる。嫌な汗が噴き出した。




「ルフィ!!トラ男君をこっちへ!!」
「ロビン!サナ!助かる頼む!トラ男はもう充分ミンゴを追い込んだ!」




ひまわり畑にいる私達に叫んだルフィはそのままローくんを投げ飛ばす。落下するローくんには右腕がない。ロビンは咄嗟にスパイダーネットで彼を受け止め、私は弾かれた彼の愛刀が地面に着く前に捕まえると同時に落下の衝撃で地面へと倒れ込んだ。サナランド!とトンタッタの小人たちが慌ててこちらへと駆け寄ってくるのを大丈夫、と制して彼の元へと走る。迫ってきたドフラミンゴをルフィが弾き飛ばしてまた城の上へと飛び上がるのが見えた。私はそのまま地面へと飛び込むように彼の側へと座り込む。




「ローくん……!!!」
「何とかなるのか!?レオ!」
「切り口がぐちゃぐちゃれす!うまく縫い合わせられれば……」




レオの言う通り彼の肩口はひどく歪に肉が断ち切られており思わず目を背けたくなる。どれだけの痛みを受けたのか、想像も出来なかった。キャベツ君が彼の体を抱き上げて下の段まで走るのにロビンと共に着いて行く。一面に咲く向日葵と私が抱えた鬼哭がひどくアンバランスに思えた。その間にも王宮の外壁はどんどんと崩れ落ち、戦いの壮絶さを物語続けている。




「……!!!待て…!」
「ッ、ろーくん!!」
「気がついたかトラファルガー!」
「……おれを、置いていけ……!」
「え!?何言ってるんだ!」




辛うじて、と言う様子で口を開くローくんは自分の人生をこの瞬間のために生きていたと語った。彼はルフィの勝利を見届けるつもりで、もし、負けることがあれば巻き込んだ自分も殺されるべきだ、と強い口調で言い放つ。彼はこういうところが律儀な人だったと私も知っていた。何より彼が他人に頼む時は大抵それ以外にどうにも出来ない時だということもなんとなく、分かっていた。キャベツ君はローを見て深く息を吐き出す。






「ニコ・ロビン、アトラス・サナ……先に行け!」
「キャベツ君……!」
「でも、っ」
「自殺願望はきけない……僕も残る、それで妥協しろ。キミが死ぬとしたら僕の次にだ!」





ローくんを地面へと下ろした彼はそこにあぐらをかいて座り込む。着ていたコートをロビンへと預けるとそのまま降りていくようにと私達に告げた。でも、私は、彼をここになんて、






「サナ……!おまえも、はやく、ニコ屋と……」
「ッ……ろーくん……!私も、あなたと、」
「駄目だ……!お前まで、巻き込むつもりは、ねぇ……!」
「でも、だって、ろーくんが」






鋭い目で私を見るローくんは絶対に許す気は無さそうだった。彼にこんな風に見られたのは初めてだ。彼は私が何かを言う前に分かっていたかのように拒絶する。それでも私もここで譲りたいとも思えなかった。彼に少しでも付いていたい、もしものことがあれば、私は、どうすればいいかわからなかった。




「ニコ屋……!」
「……!ええ、任せて」
「っ、ま、って!」




ロビンの手が私の側に生え始める。それに運ばれるより早く懐から針を取り出して痛みを解消するツボに何本か突き刺した。少しでも、あなたの痛みが楽になるように、私には無力にもこれしか出来ないから。腕達に運ばれ、遠くなる彼に息を吸い込んで思い切り、叫んだ。





「ローくん!ぜったい、帰ってきてね……!ルフィと一緒に、ぜったい……!」





彼の目は私を見ていた。肯定も否定もしなかったが、彼の口が馬鹿、と動いた気がした。




彼の姿が完全に見えなくなるのを少しだけ見つめてからロビンにごめんね、と言い、私も立ち上がる。彼女も怪我をしているのだ、無理をさせてしまった。謝る私に少し驚いた後ロビンは笑う。私にも針を頼もうかしら、なんて。こんな時ですら言われた言葉に私も思わず少しだけ口元が緩んだ。下についたら打つね、と返したそれにも彼女はお願いするわ、と口にする。私も、ロビンも、彼らの勝利を信じていた。









「びっくりしたよ…小人族とは……ちゃんとつながるといいな、腕…血が流れ始めると回復するそうだ」
「わかるよ……俺は医者だぞ」
「地下の交易港を見て察しがついたよ…この戦い…ドフラミンゴを倒せたとしても…世界に大きな波紋を呼ぶぞ。キミ達は"台風の目"になる」
「ああ……そのつもりだ」
「……言ってくれるじゃないか。キミの可愛い彼女をしっかりと守ってやるんだな」
「……あァ?彼女?」
「とぼけなくていい。あれだけ熱烈に別れを惜しむ女性と無事を案じて遠ざける男……そういうことだろう?」
「…………アイツと俺は、そんな関係じゃねぇ……!」












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