Ears 私服での登校を許された私は校門をくぐる。 私服でもよいのは、制服を買う時間がないことと、いつ転校するか分からないから。 この前母さんが学校を説得させてくれたみたい。 難聴であることを伝えると、相手はめんどくさそうな顔しかしない。 だから、誰にも不快感を与えないために笑顔を浮かべる。 初日で道も分からなかったということもあり、迷って少し遅めに学校に着いた私は早速職員室へ足を運んだ。 ------------ 玄関をくぐった私は案内板を探したが見つからなかった。 廊下で何人かの生徒と出会うが私はは話しかけなかった。 そんな勇気がない。 迷惑がられるに決まってるから。 怪しげな目で見てくる者、口元に手を置き何かを話している者がいる。 …こんな時には、きっと…… にやにやしている、がたいのいい男達が近づいてくる。 そして私の前に立った。 話しかけてくる。 男「……んで、………な…の?」 口を小さく動かしていて、声も小さく聞き取れない。 私がどうすればいいかと思っていると、だんだん男たちの眉が釣り上がった。 傍観していた者、全てにざわめきが起こる。 そして、慌てた様子で各自の教室に入っていく。 どうしたの? ?「もうすぐHRだよ? 5分前には教室に入らないと風紀が乱れるんだけど」 最初に話しかけてきた男の肩に手を置き『風紀委員』という紋章がついた学ランをはおった華奢な男は言った。 口が大きく動いていたので月空は読唇術を使い、何を言っているのかが解った。 助けてくれたんだ。 ペコペコと男達は頭を下げながら逃げていく。 その華奢な人は何かを言い、男達は無理に作った笑顔で歩いてその場をあとにした。 背中を向けて話しているから、何を言っているか解らない。 華奢な…私を助けてくれた男は話しかけてきた。 ?「君、転校生の小牧月空だね?」 私は頷いた。 そして携帯を取り出し、高速で文字を打ち始めた。 月空『初めまして。 職員室の場所が分からないので教えて頂けますか』 私は笑った。 ?「此処だよ」 彼は私を職員室まで案内してくれた。 難聴者について少し調べていたみたいで、彼は口を大きく動かして、話をしてくれた。 月空『ありがとうございます。 あの、お名前は…』 ?「あぁ、まだ言ってなかったね。僕はヒバリキョウヤ、 ちょっと貸して」 私から携帯を借りる(奪いあげる)と文字を打った。 雲雀『雲雀恭弥、恭弥でいいよ。 よろしく』 雲雀が携帯を返す。 その画面は電話帳になっていて、ひの行に「雲雀恭弥」の文字があった。 …ちゃっかりしているというか。 雲雀「困った時は連絡して」 それだけ私に伝えると、彼は、雲雀が学ランを翻して去っていった。 不思議な人… 今まで私に積極的に話しかけてきた人の中で、難聴者の事を調べて話しかけてきてくれた人なんか数えるほどしかいなかった。 …胸が温かくなるのを感じる。 ____ 職員室で顔合わせは済ました。 先生は「先生が扉を開けるから、その時に入ってきなさい」と言ったので、1Aの教室前で待っている。 まだかなぁ… 前のシモンの時はこんなに待たされなかったのに… ガラ 扉が開く。 担任「月空小牧さんだ、入りなさい」 担任が動かす口の動きと、ほんの少し聞こえる声で何を言っているのか分かり、教室に入る。 興味津津な目で見られるのも慣れた。 口に手を当て喋ってる人とか、ちょっと不思議そうに喋ってる人とか、色々。 担任からチョークを渡され黒板に名前を書く。 担任「小牧はいつ転校するか分からないため私服だ、その辺はみんな分かってやれ」 1A「「「「「「はいっ」」」」」」 大きな返事が返ってきてびっくりした。 いつもならない大きな返事が返って来る。 こんなに大きな声聴いたの久し振り。 担任「そして難聴者だ。 携帯で話すそうだから安心しろ」 私は黒板に、一対一で静かな所なら何を言っているか分かるという事を書く。 そして、振り向き、お辞儀。 担任「みんな、質問攻めにして小牧を困らせないように!」 1A「「「「「「はいっ」」」」」」」」 またまたいいお返事にまたまた驚く。 担任「じゃあ、小牧。 獄寺の隣に座れ」 きちんと担任は私の正面を向いてはきはきと喋ってくれて、解りやすい。 解ったという意味で首を振る。 担任「こら、獄寺。手を挙げろ」 獄「あ゛あ゛!!?」 担任「ほら、彼だ」 分かったので私は頷く。 『よろしく』とメール作成画面で文字を彼、獄寺に見せる。 尖った口が少し動いたのた。 …よろしくって言ってくれてるのかな? ----------- 管理人から! 難聴者が外へ出る時はとても気を使うらしいです。 夢主の場合、右耳の少しの残存聴覚と残りの四感をフルに使い会話をしたりしています^^; ――「今度また、月空にちょっかい出したら、咬み殺すよ?」 2009.9.26./12.4.28. [←] [→] [back] [TOP]
×
|