Ears | ナノ


Ears


沢田君と獄寺君が帰った。
獄寺君には遅くなるだろうから、やっぱり帰ってもらった。
まあリボーンが話してくれるでしょう。
月空も部屋に上がらせた。

…今ここは私とリボーンだけ。

リ「改めて久し振りだな、月奈」
母「久し振り、リボーン」

彼は久し振りに会った時、背が縮んでいた。
縮むというより、赤ん坊になっていた。
声も高くなっている。

母「アルコバレーノになったの?」
リ「そうだぞ」

小さくなった彼を抱きかかえる。
それでも、あの頃の温もりも匂いも同じだ。

母「ごめん…ね……!!」
リ「泣くな、オレがどうしていいか解らなくなるぞ。
  ホントは月奈が日本にいるって解った時、逢いに行こうと思った」

…さっきは、意思を尊重してって言ってたのに……

リ「だが、行かなかった。…行けなかったんだ」
母「何…で?」

リ「アルコバレーノになって体も小さくなった。
  …月奈が今までと同じように接してくれるか、不安だったんだ」

母「ふふ…いつまでも馬鹿よね、リボーンは。
  私がそんなことするはずないのに」
リ「…それもそうだな。悪かった、逢いに来るのが遅くて」
母「私もごめん、ずっと辛い想いさせたでしょ…?そばにいれなくて…」
リ「月奈……!!」

きゅっと抱きしめる力を強くする。

本当はあの時、あんな大事な日に別れたくなんてなかった。
本当はずっとあなたの傍にいたかった。

本当はずっとの横で笑っていたかったの。




-----------



その時は突然来た。
仲のよかった、親友だった友達が倒れた。
原因は当時治らないだろうとされていた病。
病名は…覚えてない。

すぐに病院に運ばれ、私も急いだ。
彼女は痛々しい器具が取り付けられていた。

「おそらく…治らないでしょう」

医者から宣告された。

彼女は末期で、余命は1ヶ月持つか、持たないか。
私は泣いた。
まだ彼女は死んでなかったけど。
リボーンも長期任務でいなかった。
病室に閉じこもり、ずっと彼女の手を握っていた。
不安で不安でしょうがなかった。

そして、突然の訪問者が、この先の運命を変えることになる。


その時突然病室に訪れたのは逢ったこともない男。
白衣を着た、眼鏡男。

「病気を治してやろう。
 その代わり、月光の白雪、貴様の武器を寄越せ」

月光の白雪というのは、私の異名。

「あなた…誰ですか」
「ヴェルデだ。どうするんだ、その女の命か己の武器を選ぶか、貴様の選択肢は2つだ」
「まだ逢って40秒の人にそんな選択肢、選べるはずないでしょう」
「今選べ。友を見殺しにするのか?」

そんなことできるはずがない。
でも、私の唯一の武器を渡したら、マフィアを続けれない。

彼に迷惑がかかる。

裏の世界というのは非情で。
戦えない者は後方支援にいくか、この世界を去るか。

私は戦えなくなると、意味はなくなる。
戦える――最強の名前を手に入れたから、ここまで生きてこれた。
生きる意味さえなくなる。

彼の傍にいるには、ボンゴレに厄介になるくらいしかできない。
独りでいると私も命を狙われる可能性がある。
リボーンに脅迫状とかがくるかもしれない。
…それは駄目だ。

「……あなた、ヴェルデさんは私の"白架"を手に入れてどうするんですか」
「研究だよ。それ以外なにがあるっていうんだ」

"白架"はリングから出る死ぬ気の炎を挿入すると、武器が出るという仕組みの珍しいものだ。
それを狙っているのか。

「それを研究すれば、莫大な技術が手に入る」
「その為だけ何ですか?」
「…研究の為だけだが?」

ちょっと本心を隠してる気がする。

「私にマフィア界を引退しろと?」
「武器がなくなったからといって引退まではないだろう。
 ボンゴレに世話になればいい」

そんなの私が許さない。
役立たつなのに、存在するなんてありえない。

「2,3日待って貰えますか。彼に相談したいんです」
「最強のヒットマン・リボーンか?それともボンゴレ\世か?」

どこまで調べてんだ、こいつ。

「…両方です」
「駄目だな、そんなに待てない。1時間だけ待ってやろう」
「1時間!!?」
「治すか渡すかどっちかだ。早くしろ」

何だお前!
強引な時のリボーンにそっくりだな!!

口には出さず、携帯の着信履歴からリボーンの携帯を呼び出す。
lulululu...
…出ない。
それもそのはず。
今は仕事中だ。
電源を切っているのかもしれない。

なら先にボンゴレだ。
ボンゴレの私用携帯番号を知っている。

lulululu....
「もしもし、月奈かい?」
「こんにちは、ボンゴレ」
「君は確か病院にいるんじゃなかったかな?電話を掛けてきてもいいのかい?」

あ、やべ、まずった。

「あ、もちろん。公衆電話の近くで…!!」
「嘘は駄目だよ。公衆電話の近くに行きなさい」

電話口に手を置き、ヴェルデさんに話しかける。

「あの、席を外してもいいですか」
「構わない」

軽く謝辞を述べ、急いで公衆電話の所へ移動。

「もしもし」
「もしもし。それで、どうしたんだい?普段滅多に掛けてこないのに…」
「あの、ヴェルデさんって知ってますか?」
「ヴェルデ?ああ、あの研究者かな」
「あ、多分その人です。白衣着てたし。
 そのヴェルデさんが、友達の病気を治してやるから、私の"白架"を寄越せと言っているんですが…」
「あの脳が委縮してしまう病気をかい!!?
 …彼もその技術を世に公表すればいいのに……」
「……どうすればいいと思いますか?
 私、戦えないのにボンゴレに居る気はありません」
「君がいるだけで私の守護者はやる気を出してくれるのに」
「嫌です… それに、端(ハナ)からそういう約束じゃないですか」

―名前だけでいい。私の守護者になってくれ。

「守護者というのはボンゴレ\世を守る存在。
 守れないのに守護者のままでいていいはずないじゃないですか」
「…君は頑固だね」
「いくらでも」
「君が好きなようにしなさい。援助くらいならするよ」
「どうしろって言うんですか…?」

私、彼なしでは生きていけない。
引退なんてしたら………

「なら、死亡工作でもするかい?」
「…彼を騙したくない」
「……本当に頑固だね。リボーンなら解ってくれるよ」

でもボンゴレにはいられない。
リボーンのことは諦めるしかないの?

「リボーンに連絡がつかないんです。任務中だから…
 彼の任務が終わったら、一緒に任務くれませんか?
 …その時に別れます。
 彼との最後の思い出に……」
「(そんなことをしても彼は喜ばないよ……)
 解ったよ。別れた後、どうするんだい」
「……日本にでも行きます」
「独り暮らしするつもりかい?」
「はい。何か職業探します」
「いいかい?君は裏の人間だ。
 繋がりある人間に見られたら命を狙われる。
 武器を持っていない君は格好の鴨だ」
「…そこまで言わなくても」
「護衛をつけるよ。
 うーん、そうじゃ。旦那役でどうかな?」
「護衛なんて大袈裟な!嫌です。私リボーン以外と結婚する気なんてありませんし」
「別に籍を入れろと言ってないじゃろ。
 旦那役で護衛をつけた方が、後々困らないだろう?
 それに、護衛なしじゃ許可しないよ」
「…………じゃあお願いします」

何か強引に決められた気がするのは、きっと気の所為。
……だと信じたい。

「ああ、コヨーテス。解った。
 悪いね、月奈。急務が入った。
 準備はしておくよ。ヴェルデの誘い、受ければいい」
「解りました……ありがとうございます」
「大丈夫不安に思う心配はない」

それだけ残して、ボンゴレは電話を切った。

私はリボーンに真実を隠すだけ。
…決して騙したりなんか、しない。




------------




月「それで…」
リ「あの任務になったってことか」

リボーンは時々相槌を打ちながら、私の長い話を聞いてくれた。

リ「月奈の口から事実が聞けてよかったぞ。
  オレはただヴェルデの野郎を脅して、聞いただけだったからな」
月「ヴェルデ…!!?」
リ「あいつもアルコバレーノになった。
  その時に口を滑らしやがったからな。
  "あのリボーンか。月光の白雪と仲良くやってるのか?"ってな。事実を知ってるはずなのに」
月「簡単に想像できるね」
リ「……もうこんな時間か。そろそろツナに宿題をさせないと間に合わないぞ」
月「…沢田君ってリボーンの子なの…?」
リ「そんなはずないぞ、オレはあいつの家庭教師をしているんだぞ。
  ボンゴレ\世の依頼でな」

ああ、成程。
だから、ボンゴレ]世候補と一緒にいるんだ…

月「そうだ。子供と言えば…」
リ「ん?何だ?」

月「あの子……月空ね?
  私とあなたの子供なの

リ「……………………………………………は?」
月「動揺しすぎ。落ちついて」
リ「……本当か?」
月「私はリボーンを騙したりなんかしない」
リ「真実は隠すけどな」
月「…ごめん」
リ「そうか…オレと……」
月「ひきとめてごめんね。家庭教師頑張って」
リ「もちろんだぞ。また来るな」

ぴょんと私の膝から飛び降りる。
邪魔したな、と言いながら、玄関に向かった。

月空≪あ、リボーン君。お話終わったの?≫
リ「終わったぞ。月空。
  明日は9時くらいに迎えにくるから、きちんと準備しておけよ」

丁度月空が宿題を終えて自室から出てきたところだった。
もう日が沈みかけ、空はオレンジに染まる。

月空≪今から山本君の所に行くの?≫
リ「よくわかったな。その通りだぞ。明日の訓練受けるか聞きに行くんだぞ。
  今頃の時間はバッティングセンターにいるだろうからな」
月空≪へえ!リボーン君ってば何でも知ってるんだね≫

最近月空の表情が柔らかくなったのは、仲のいい友達ができたからか。
…嬉しい。

月「リボーン、またね」
リ「ああ。今日はありがとう」
月空≪(リボーン君がありがとうって言うの初めて聞いた…)≫

ガチャリと扉が閉まった。
リボーンが帰ったのだ。

月「月空には明日話すからね…
  おやつ、遅くなったけど食べる?」
月空≪うん。ありがとう!≫


可愛い可愛い愛娘。
貴女に醜い真実なんて言いたくないけれど。



------------
管理人から!

話重い…orz
しかも文めっちゃくちゃ\(・∀・)/←自覚あり
15話にもなったし、過去をそろそろ話した方がいいかなと思いまして(*´∀`)
こちらにリボーンと母のお別れ話があります←
初期に書いたのできっと話はぐちゃぐちゃ。←直せ

2011.2.26./.3.3.


[] []
[back]
[TOP]
×