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趣味はイタズラと締め括ったナルトには呆れた。さすがアカデミーでも有名な問題児だ。
つい先日、火影岩に落書きしてこってりしぼられたと聞いたが、この様子だと全然懲りてないんだろうな。

俺は今、俺の生徒(になる予定)の3人に、それぞれ自己紹介をさせている。

一番目に自己紹介させたナルトは(呆れる部分は多々あれど)なかなかにおもしろい成長をしていた。この中で、一番将来が楽しみだと思えるのはこいつかもしれない。

……問題はこいつだ。

うちは サスケ。

実の兄に一族を根絶やしにされた少年。
その心境は、……想像するに難くない。
俺はやれやれと頭を掻きながら、ナルトの隣で静かに座る少年を注意深く観察した。
………なるほど、イタチによく似ている。
サスケの真っ黒な瞳からはなにも読み取ることができない。
とても凪いでいる様に見えるが、果たして本当にそうなのか。
イタチも、ひどく静かな眼をした少年だった。
ともすれば、サスケはナルト以上の問題児になるだろう。


「次、真ん中の奴」


俺はあまり興味のない様子を装いなから、うちはサスケを指さした。
サスケは億劫そうに首をもたげると、しげしげと俺を見つめる。

……なんか、観察されてる…?


「俺の名はうちはサスケ。好きなものは平穏、嫌いなものは争い事、かな。将来の夢は……なんだろな。とりあえず、平和……?」


ふむ、と考えるような仕草でサスケが口にしたのは、何とも忍らしからぬ台詞だった。
いや、いいと思うけどね、平和。平和が一番だよ、俺が言うのもなんだけど。
でも平和って、それ、ただの願望デショ。


「アハハハハ!とりあえずってなんだってばよ!サスケらしーけどさ!」


ナルトがサスケの方を向いてケラケラと笑いだした。
笑われているサスケは気を悪くした様子もなく、自身の瞼にかかる髪を払い除けていた。


「そうか?俺はとにかく穏やかな老後を過ごしたいんだよ」

「んじゃ、俺が火影になったらサスケの夢叶えてやるってばよ!」

「そうか、頼もしいな」


…ん?んー……。なんだか、なぁ。

和気あいあいと会話するナルトとサスケを眺めながら、俺はひどく間抜けな顔をしていたに違いない。なんだかすっかり毒気を抜かれてしまった。


「じゃあさ、じゃあさ、俺が火影になるの手伝ってくれってばよ!」

「ああ、それは勿論だけど俺を頼ってばかりじゃ火影にはなれないからな」

「解ってる解ってる」

「本当かよ」


サスケとナルトは仲が良いようだ。てっきりこの二人は反発し合うと踏んでいたんだがな。
サスケの方が、予想外に穏やかな性格の持ち主らしい。お兄さん気質とでも言おうか。


「ちょっとナルト!今はサスケ君の自己紹介なのよ!サスケ君の邪魔しないで!」

「別に邪魔なんてしてねーし!むしろ会話に割り込んできたサクラちゃんの方が邪魔だってばよ!」

「なんですってーーー!!」


急に言い合いを始めたナルトとサクラに挟まれて、サスケはこめかみを押さえながら俯いた。
この二人の言い合いはよくあることなのかもしれない。


「私がいつサスケ君の邪魔したっていうのよ!何時何分何秒この星が何回回った日!?」

「んなこと知るかよ!でも俺がサスケと話してるといっつも割り込んでくるし、サスケにベタベタするし、サクラちゃんってばマジ、邪魔!」

「なによこのウスラトンカチのくせに!!」

「うっせー!このバーカバーカ!!」


間に挟まれたサスケが呆れたようにため息をついたが、二人はそれに気づかない。
両隣が互いに身を乗り出しているため、サスケはひどく窮屈そうだ。


「お前ら…ちょっと待て」


うんざりしたようなサスケが言い合う二人の前に掌を翳すと、ナルトとサクラは反射的に静止する。
サスケはジロリと睨むように俺を一瞥したが、すぐに諦めたような顔になってナルトとサクラの頭を小突いた。


「まず1つ、お前らうるさい。喧嘩なら他所でやってくれ。2つ、状況を考えろ。喧嘩するなとは言わないが、まさか任務中にまでこうして喧嘩されたんじゃこっちがたまらない。3つ、お前らうざい。次、俺のことで意味不明な喧嘩何てしやがったら暫く口きかないからな」


そう言いきったサスケは、静かになった両隣を見て満足そうに鼻を鳴らした。
ナルトとサクラは、お互いに睨み合ってはいるもののもう口喧嘩はしないだろう。
ただ二人の間には先程よりもぎすぎすした空気が漂っている。
なんか空気が痛いんだけど…サスケはまったく気にならないようだ。


「で、返事は?」


サスケはにこりと笑った。俺が見た中では一番いい笑顔だが、これはあれだ。二人に「わかりました」と言うことを強制させる笑顔だ。

……ちょっとサスケの性格が見えてきたな。


「………」

「………」


二人もサスケの笑顔に何か察するものがあったのだろう。別の意味で黙りこむ。
サスケはのんびりと頬杖をつきつつ空を見上げたが、二人を急かすように「…返事」と呟いた。


「「…わかりました」」

「はい、よろしい」


ま、なんだ。
こいつら、いいチームになる……か?



 

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