ジャンバールに送り出されて、私たちは試験会場ナウである。
ステーキ定食、弱火でじっくりの合言葉はいらなかった。だから少なくとも奇術師が出てくる事はない。蛇とか狸は出てくるけど。どっちがマシかと聞かれたらちょっと答えられない。
「試験ってどんな試験なんすかねー?」
試験会場に集ったガラの悪い連中を一瞥してから、シャチはつまらなそうに言った。
「下忍選抜試験のような殺し合いじゃないのか?」
ペンギンがサラッと恐ろしい事を口にする。
一応断っておくが、あの試験は鈴取り合戦であって殺し合いではない。
ジャンバールが殺す気でこいなんて言うから2人が勘違いしただけだ。
でもどこの班よりも壮絶な戦いを繰り広げた自信はある。最終的にペンギンに毒を盛られ、私にバラされ、シャチに生首サッカーされたジャンバールは御愁傷様でした。まだ生きている事に感謝しろ。
「今日は皆さんにちょっと殺し合いをしてもらいますってか?そんなん俺様の圧勝じゃん」
カラカラと笑うシャチに向けて、話が聞こえたらしい他の受験者たちの殺気が飛んでくる。
しかしシャチは反応しない。格下は相手にしないスタイルか。
ナチュラルに喧嘩売らないでほしい。積極的に中指立てる私が言えた義理じゃないけど。
仕方がない。試験前から揉め事が起きるのは勘弁なので私も口を開く事にした。
「ほぉ・・・なら私が相手をしてやる。気を楽にしろ、シャチ」
「え"ッ!いや、そんな事したら俺ソッコーで死んじゃいますよ!!今のは言葉の綾でしてぇ・・・」
「キャプテンに勝てる奴なんて、ここにはいないでしょうね」
思惑通り焦るシャチの傍で、ペンギンが余計な一言をつけ足した。なに得意げな顔してるんだ。
その発言を受けて、今度は私に殺気が送られる。
話を逸らそうとしただけなのに敵が増える。何故なのか。
「そこの君たちもだよ。そういう事はもっと静かに話したまえ」
よほど煩かったらしい。木の葉の額当てをつけた丸眼鏡の男に注意を受けた。
名をカブトとかいったな。大蛇丸のスパイでちょっとヤバい奴だった気がする。
カブトの後ろでは同窓生達が一堂に会していた。
関わりたくないのでシカトしよう。
「ゲッ!お前らもいたのかよ」
そう思うのに、ナルトが大声で指をさすものだから皆に注目される。
今静かにしろって言われたばかりだろ。
カブトは苦笑いだ。
「ちょっと!指差すのは止めなさい」
焦ったサクラがナルトの腕を掴んだ。
サクラはあからさまに怯えている。
そんな目で見るなよ、切なくなるじゃないか。間違っても興奮はしません。
でもそりゃそうか。シャチもペンギンもアカデミー時代からヤバいもんな。誰だって怖がる、私だって怖い。
「あれェ?動物イジメしか取り柄のないお三方じゃないですかァ。お前ら人間相手に戦えんのかよ?」
しかし修行を重ねたとかで調子に乗っているキバは挑発的だ。
私は動物をイジメたことはない。なのにこの言われようである。思わぬ風評被害だ。落ち込む。
「戦えるに決まってんだろ〜。犬猫刻むよりよ人間刻んだほうが楽しいしぃ〜?忍になったのも、合法的に生きた人間の腸を引きずり出せるからだしぃ〜?」
シャチはそう言ってベッと舌を出した。お前そんな理由でアカデミー入ったのか、はじめて聞いたんだけど。
そしてサイコーにヤバい笑顔ですありがとうございました。
これにはさすがのキバも一歩引き下がった。
「俺も試したい薬が・・・いいですよね?キャプテン」
何が?なんで私に聞くの?とは言えないので、ニヤリと笑うに留めておく。
好きに解釈したらいいよ。
ペンギンは嬉しそうに、しかし控えめに微笑んだ。その顔不気味だぞ。いい子ちゃんの仮面が迷子ってる。
二次試験で死人が増えるのは確実だ。
心の中で謝っておくわ。ごめん。
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