▽ アゼル は なかま を ふやした。




時はさらに流れ、死ぬほど簡単だったアカデミー卒業試験の翌日。卒業生たちが集められたホールでは事前説明会が開かれていた。

私は一番後ろの席に陣取って、ポケットに手を突っ込んだまま足は机の上へ。
背景の効果音はドン!だ。当たり前だろ言わせんな恥ずかしい。
お行儀が悪いって?トラファルガーだからさ。
閣下公認の行儀の悪さだもの、仕方ないんだ。
そして隣にはペンギンが、前にはシャチがだらしなく座っている。

か、囲まれている!!?

でも大丈夫だ問題ない。
今や彼らは私を崇拝する立派な腰巾着なのだ。
ハートをスティール(物理)され過ぎて何かに目覚めたらしい。
何かってなんだろう、怖いね。


「ーーーー班は以上の3人だ!」

「っしゃあ!キャプテン俺ら同じ班っすよ!」


シャチが満面の笑みで振り返った。
くだらない事を考えていたせいで大事な班分けを聞き逃していたようだ。
よく何を考えているかわからない子と言われるが、そんな時はだいたい下らない事を考えています。若しくは考える事を止めています。


「・・・そうだな」

「テンションひっく!キャプテンテンションひっく!!」


お前が高いんだよ。
何その謎のハイテンション。エネルギッシュでいいと思います。

シャチやペンギンとの付き合いはかれこれ一年半になる。
最初はアゼルさん呼びだったのに、いつの間にか自然な流れでキャプテンと呼ばれるようになっていた。
きっとそのせいだと思うが、シャチが何かやらかす度に私も職員室へお呼ばれするようになった。部下の責任はお前が負えってやつか。学生にそれは理不尽すぎるだろJK。

シャチはナルトとはまたちょっと違ったタイプの問題児だ。
性格はナルトのような直情型のアホっぽいバカだけどな。安心しろ、これは褒め言葉だ。
これでスプラッタ映画の再現に情熱を傾けすぎていなければ、教師たちを苦い顔させずにすむのだがな。
今も動物の生首でダルマ落とししていた名残が袖にべっとりくっついている。これは事案ですわ。
そんな危ない趣味オープンにするなよ。
いつかチェーンソー振り回して逃げ惑う敵を後ろから斬り刻む日が来るのだろうか。いや忍べよ。
こいつはろくな死に方しないと確信している。


「シャチ、煩いぞ。あ、今後ともよろしくお願いします、キャプテン」

「ああ 」


ペンギンが居住まいを正して頭を下げた。そのいい子ちゃんな反応にはいつも草が生える。
やらかしたシャチの責任を負うのがわたしなら、嗜めるのはペンギンの役目だ。そのお陰で教師たちの受けはいい。
真面目な生徒と思われているようだ。
でも本当にそうなら、シャチのような人間とは連まないと何故誰も気付かない。
ペンギンは常識人の皮を被るのがシャチより上手いだけで中身のヤバさはそう変わらない。
今日も早朝から動物が自作の毒によって苦しみ悶えて死ぬ様子を楽しげに観察していた。
永く苦しみ悶えながら死に至らしめる毒の開発に全力を出しているのだ。
こいつもろくな死に方をしない。

二人はどこで何を間違えて育ったのか。
青春時代なんだからもっと爽やかでいいじゃない。なんで血生臭いんだよ。






各班の発表も無事に終わり、昼食後には上忍師との顔合わせが待っていた。
私は焼き鮭のおにぎりを頬張りながら上忍師について思いをめぐらせていた。
ついでにシャチとペンギンは、気に入らない上忍師が来た場合の暗殺方を熱く語っていた。やめて差し上げろ。
トラファルガーを導く人といったら一人しか思いつかない。私もローさんのように、命と心をもらえるだろうか。
出演先間違ってるとか突っ込みは入れないから四捨五入でアラサーなドジっ子に会いたいです。

・・・・なんて、甘い事を思っていた時期が私にもありました。


「お前たちの上忍師となるジャンバールだ。宜しくな」


私たちの前には厳つい大男がいた。

お 前 か よ 。

早速絶望した。
コラさんなんていなかったんや・・・。
もしかして、いやもしかしなくても私の周りにはクルーが集まってきている・・・だと?
こいつで三人目だしな。そのうち喋る白熊も登場するのだろうか。ベポぇ・・・。
ハートの海賊団のクルーは総勢20名だ。万が一全員集ってしまったとして、それは何マンセルになるのだろうか。
もはや小隊って人数ではない。忍べる人数でもない。
やはり海に出るしかないのか。旗をあげるのか。イエローサブマリンに乗ってヨーホーするのか。
七武海になってドレスローザに乗り込むフラグか立つな。
心臓100個集めなきゃ・・・(使命感)。


「先ずは自己紹介をしてもらおう。名前や好きなもの、嫌いなもの。特技や将来の夢なんかを聞きたい」


私が海賊旗の絵柄を思い出そうと奮闘している間に、自己紹介をする流れになっていた。
シャチが元気よく手を挙げる。


「じゃー俺から!俺はシャチ。好きなもんは強い奴とスプラッタ映画。嫌いなもんは退屈。特技は機械いじりで、将来の夢はデケー事してみんなをアッと言わせることだ!」


シャチが真面目に答えている。素直に驚いた。
シャチはコミュ力高そうに見えてペンギン以上に人見知りなのだ。排他的とも言う。


「では次は俺が」


ペンギンが控えめに挙手をした。


「名前はペンギン。好きなものは薬草図鑑。嫌いなものは身の程を弁えない馬鹿。特技は薬の調合だ。将来の夢というか目指しているのは薬剤師だ」


薬の字を毒に変えるとしっくりくるから困る。
将来はマッドファーマシストか。
機嫌を損ねると一服盛られる可能性があるから怖い。

そしてジャンバールが私を見た。
自己紹介って何故こんなにドキドキするのだろうか。でもそんな事口が裂けても言えないから、ちょっと怠そうな雰囲気を醸し出しす。


「私はトラファルガー・アゼル。好気な事は読書、嫌いなものはパンと梅干し。特技は傷の手当てだが、バラす方が性に合ってる。将来は医者になるつもりだ」


バラす方が性に合ってるのに、医者に俺はなる!ってのもどうかと思う。
自分で言っておいてちょっと微妙な心境になったが、ジャンバールは笑顔で感心していた。
それで気づいた。

この班、私に対するツッコミが不在だ。

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