結局ドラコが何をしに来たのか分からないまま、我々はドナドナと列車で運ばれて行く。

「さっきのって、誰だったんだろう?」

満身創痍で去って行ったドラコを気にしているのか、ハリーは誰にでもなく問いかけた。

「あれはルシウス・マルフォイの子供だよ。名前はドラコだ」

「マルフォイだって?」

私の説明に眉を顰めたのは我が双子の兄弟だ。
今の我が父、アーサー・ウィーズリーとかつての我が息子、ルシウス・マルフォイは犬猿の仲である。
従って、ロンやその他の兄弟たちのマルフォイ家の印象は最悪だ。

「例のあの人がいなくなった時、一番最初にこっち側に戻って来たのがあの一家なんだ。魔法で操られてたって言ってるけど、僕のパパは信じてないよ」

「そうなんだ・・・」

ロンは真剣な顔でハリーに話した。ハリーも深妙に応える。

「結局真相は闇の中だけどね。いやぁ実に狡猾に立ち回ってくれたようだ、ルシウスは」

「それ誰視点で話してるの?」

ハリーに言われて少し困った。勿論アブラクサス視点です、とは言えない。


「ねぇあなた達、さっきネビルを無視したでしょう」

再びドアが勝手に開いた。
ロンもハリーも"またかよ"みたいな顔で入口を見る。
私は一応杖を取り出しておいた。面倒ごとなら即刻退却させる!

そこに居たのは栗色の髪の少女だった。髪の毛が多いのかモッサリした印象を受けるが、話し方は少々攻撃的だ。
後ろにはネビルが縮こまりながら控えている。

「さっき?」

「ネビルがヒキガエルの事を聞きに来た時のことよ。どうしてそんなことするのよ、最低だわ。困ってる人を助けてあげようとは思わなかったの?」

早口で捲し立てられて、ハリーもロンもポカンとなっている。
可哀想なロングボトムは、2人の記憶に残ってないようだ。

「あら貴方、魔法を使うの?調度いいわ、私にも見せて」

杖を持っている私を見て、少女の話は急カーブを見せた。皆がさらにポカンとなる。
女性の話題はコロコロ変わるものだが、彼女の変化球を受け取るのはメジャーリーガークラスでないと無理なようだ。

「マルフォイみたいにしちゃダメだよ、女の子なんだから」

ハリーは小声で言った。
私は頷きつつも頭を悩ませた。このタイミングでなんの魔法を使えば良いのか分からない。

「・・・オーキデウス、花よ」

女性は花が好きだろうと、ありきたりな発想で呪文を唱えた。
杖先から溢れ出した色とりどりの花々がコンパートメント内に降り注ぐ。

「聞いたことのない呪文ね!教科書には載ってなかったわ。貴方の家族も魔法使いなの?」

「そうだよ。こいつは僕の双子の弟なんだ」

何故かロンが得意気に説明した。

「私、教科書は全部暗記してきたけれど、それでも足りないかもって、貴方を見て思ったわ。やっぱり他の参考書も買うべきだったわね。私の家族に魔法使いはいないの。だから手紙が来た時はすごく驚いたけど、嬉しかったわ。ホグワーツって最高の魔法学校なんですって。因みに寮はグリフィンドールが良いみたい。ダンブルドア校長先生もグリフィンドールの卒業生なんですって。勿論知ってると思うけど、ダンブルドアは偉大な魔法使いだわ。彼の功績を書いた本を読んで、本当にそう思ったの。それから、教科書に載ってた呪文は幾つか試してみたの。それは全て成功したけど、何かコツとかあったら教えて欲しいわ」

「・・・ああ、教科書通りにやれば問題ないよ」

私はとりあえず、そう言い返すので精一杯だった。
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