よく滑る赤い絨毯の上で、山吹は漸く一息つくことができた。

「今回は疲れたなぁ」

四角い窓から見える空は淡い群青に染まりつつある。
薄暮時、これは良い時間帯である。
薄暗がりに溶け込むように姿を眩ませばは、ことの真相は日の目を見ぬまま宵の底へ沈み、終ぞおもてを向けることはないだろう。

山吹はやんわりと笑った。
視線の先には侍が無残な姿で事切れていた。
彼はこの国の姫に侍る、忠義の男だった。
この男を欺くために、どれほどの労力と犠牲を払ったのか、もはや考えるのも億劫である。
だが、強敵だと思っていた男も、こうして死体にしてしまえば案外可愛いものであった。
そんな心情を読み取ったかのように、虚空を映す死人の瞳は山吹を責める。
責め立てられた本人は、軽く肩を竦めてそっぽを向いた。

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