教え子のナルトが元気よく行きつけのラーメン屋に走って行く背を見て、ふと、ある少年の事を思い出した。

ほんの数年前だが、梔子もあの頃はまだ十代であった。名前も山吹と名乗っていた。

少年の名前は太助と言った。
貴族の子供らしく世間知らずで、世界は自分を中心として回っていると信じて疑わないような性格であった。
そんな少年を、梔子は任務のために利用し、華やかな貴族世界から蹴落とした挙句、淀んだ水中へと放り込んだ。

今も彼は恨んでいるだろう。
揺蕩う暗い水中で、滲む憎悪を静かに積のらせているに違いない。

今の梔子の背中には、そんな業が幾つものしかかっている。
あのナルトのような綺麗な背中は、過去の群青に捨ててしまったのである。

たまにあの少年を思い出すのは、罪悪を感じているからだろうか。

記憶の中にある少年の瞳は、何故ナルトの背を刺さぬのかと、恨みがましく見つめていた。




















山吹は逃げ惑う太助の背中に、芝刈りに用いる粗末な鎌を突き立てた。
彼はナルトと同じ、背負うもののない綺麗な背中をしていた。
刺した感触はもう忘れてしまっている。
死体は山中の井戸に投げ捨てた。
少年はまだ水中を揺蕩っている。
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