▼ ハッフルパフは実にいい



ホグワーツに付いた一年生を待ち構えていたのは、身長が2メートル以上もある毛むくじゃらの大男だった。
見上げ続けると首を痛めそうな大男は、「イッチ年生はこっち」と手招きしている。

「まさかあの薄汚い森番に案内させるつもりなのか?」

トムの横には何故かマルフォイが立っていた。
トムは一応ハリーとロンの姿を探してみたが、人でごった返したこの場所でそれらしいクルクルパーマと赤毛は見つけられなかった。
下車する際に、(ロンがあえてそうしたのかもしれないが)すっかりはぐれてしまったようだ。

「やあ、また会ったね。マールヴェルト」

「御機嫌ようマルフォイ。ここは足場が悪いね」

トムは転ばないように気をつけようという意味を込めてこう言ったが、マルフォイは鼻を鳴らして嫌みたらしく「全くだ」と答えた。


森番のハグリッドを先頭に、皆足並みを揃えてぞろぞろとついて行く。
トムは、一年生たちが転ばないか見張りながら歩いていた。自然とそうしていたのだから、教師という肩書きが骨の髄まで染み込んでいる。
暫く歩くと、トムの横にぴったりとくっついて来たマルフォイが気取った様子で口を開いた。

「多分城に入ったらすぐ組分けだ。父上がそう言っていた。君は何処の寮になると思う?」

「寮か・・・組分け帽次第だね。特に希望もないし、何処でもいいよ」

と言いつつも、トムは今回もスリザリンに組分けられることを予感していた。

「何処でもいいだって?僕はもしハッフルパフなんかに組分けられたらと思うとゾッとするよ。死んだ方がマシだね」

マルフォイのあんまりな言い草にトムは苦笑した。
純血の魔法使いの視野の狭さは何処へ行っても、たとえ時代が変わっても、何も変わらないらしい。

「真のハッフルパフ生は素晴らしいよ。ホグワーツ創立時にはヘルガ・ハッフルパフの人徳によるコネが大きく役立ったそうだ。それと、他寮の生徒の侵入を許したことがないのはハッフルパフだけなんだ。口が硬く誠実で、彼らは実にいい」

勿論、ハッフルパフにはトムの称賛に値しない生徒もいるが、それはどの寮を見渡したって同じだ。

「へぇ、君は物知りだな」

マルフォイは関心したように頷いた。
てっきり、ロンのように喰ってかかられると思っていたトムは拍子抜けした。
このマルフォイという少年は、自分の自尊心が関わらなければ、大抵のことは大人顔で流せるようだ。貴族の子は基本大人に囲まれて育つので、当然と言えば当然なのかもしれない。

「そう褒められると照れるね」

トムははにかんだが、内心ではマルフォイの人間性を決めつけてかかった己を恥じた。
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