【操作ファイル1:キラ事件】



世間を騒がせるキラ事件。
それが大々的に取り沙汰されるようになったのは、やはり、あの一件以来だ。

L VS キラ。
当初は日本の関東圏のみに放送された映像だが、某大型動画サイトにアップデートされてからは世界中で再生されまくっている。
各メディアは、L・キラについて勝手な憶測をでっちあげ、ブラウン管の向こうでは適当な論議が飛び交う。世間の関心は目前に迫ったクリスマスよりも、この得体の知れない二人に注がれていた。

私はコンピューター画面に映った頭が痛くなりそうな数字を眺めつつ、温めのコーヒーを啜った。
コーヒーはペーパードリップ式の物を愛飲している。濃いめに落としたコーヒーに砂糖子匙4杯と牛乳をたっぷり入れて頂くのが好きだ。
ついでに言うと、コーヒーと牛乳の割合は3:7がベストだ。これを見た同僚には「子ども舌」やら「それはコーヒー風味の牛乳であってコーヒーじゃない」やらと詰られるが、私はこのスタンスを変えるつもりはない。

私がコーヒー入りのマグカップをコースター上に戻すとほぼ同時に、画面上の数値が更新された。
今私が見ているのは、仕事の片手間に作った監視システムが弾き出した犯罪者の死亡数とその氏名及び死因等々だ。
今のところ日本で死んだ犯罪者しか把握できていないが、Lがキラは日本にいると証明してくれたので、他国にまで監視の目を広げる必要はなくなった。

「もうそろそろ始まるよ」
「あ、松田さん…わかりました」

私に声をかけたのは同僚の松田桃太だ。
キラ事件でピリピリしている警察内では貴重なお気楽者、あるいはおバカさんだ。
この人はいつも真面目なんだかふざけているんだかよくわならない。
おそらく前者なんだろうな、とは思う。空回り方が凄まじいだけで。
まぁお堅い人の多い警察では、時々こんな人も必要なんだろう。

私はノートパソコンを閉じ、メモ帳とボールペン、そしてマグカップを持って松田さんの後に続いた。

「え、コーヒーは置いてった方がいいんじゃないかな」
「何でですか?」
「いや、だって…真面目な報告会だし怒られちゃうよ」
「そんなぁ松田さんじゃあるまいし」
「それどーゆう意味?」

松田さんとのこんなやり取りは結構楽しい。
唇を尖らせてしまった松田さんの幼さに私はケラケラと笑った。
そうこうしている内に、凶悪犯連続殺人特別操作本部と書かれた仰々しい看板が視界に入った。









はっきり言って、報告会はつまらない。
どうでもいい報告が多すぎるし、重要そうな情報は聞くまでもなく既に得ている。
私は皆が怖い顔でそれぞれの報告を聞いている中、のんびりとコーヒーを啜った。

報告会も終盤に差し掛かった頃、松田さんが余計な一言を添えて微妙な空気を作り出したことだけが可笑しかった。
やっぱり松田さんは楽しい人だ。

《お疲れさまです。また少し犯人に近づけた気がします…》

会議室の一番後ろで傍聴していたワタリの持つパソコンを通して、Lとおぼしき人物が私たちを労う。

L…。はっきり言ってかなり怪しい探偵だと思う。Lが人前に姿を現さないのは防犯上の理由なのだろうが、その徹底ぶりはちょっとキモい。
実はLは人間じゃなくてどっかの秘密機関が造り上げた人工頭脳です、などと言われても完全には否定できないだろう。
そしてワタリもなかなかの不振人物だ、服装的に。職質された経験も一二回では済まないだろう。

《そして、また注文で申し訳ないのですが…》

Lの声が淡々と続く。
合成音のせいで余計に淡白に聞こえるが、おそらく肉声を聞いてもあまり人間味は感じないだろう。そんな印象を与える話し方だ。

《特に被害者班、報道班、インターネット班に、犠牲になった者が日本でどのような報道のされ方をしていたかを、もう一度よく調べて頂きたい》

私は一応インターネット班にいる。また残業か、と欠伸を噛み殺した。

《知りたいのは犠牲になった犯罪者の写真や映像が出ていたかどうかです。よろしくお願いします》

ん…?と思った。それなら私が勝手に調べていたので知っている。
しかしLは用件を伝えるともう用はないとばかりに通信を切ったようだ。
しかも夜神次長が「今日はしっかり休め」と言うと、皆さっさと退室し始める。
……すっかりいうタイミングを逃してしまった。 

「……いっけね」

私の声はむなしく響いた。








――あとがき―――――
またやっちゃった。これ以上ネタ増やしてどうするんだバ管理人め。
と、いうわけで捜査員主人公で、しかも珍しく女主です。
Lよりになったらいいなぁ、と思います。
糖度は低いけど。
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