前書き
ダンブルドアとはなんやかんやあって取り合えず話は纏まったよ!
ハリー視点で始まるよ!




▼ 列車のコンパートメントで見知らぬ少年と会いました。

 ハリーはワクワクと浮き足立った気持ちの反面、言い知れない不安を抱えていた。

 最初の関門、キングス・クロス駅の9と3/4番線には、親切な魔法族のお陰で無事たどり着けた。
 しかし、内側で燻っていた不安は徐々に大きくなるばかりで、ハリーは自分の胸元をかきむしるように握っていた。

 右を見ても左を見ても、ここにいるのは全て魔法使い。けれど、ハリーは魔法なんて使えない。魔法が使えない魔法使いなんて魔法使いじゃない…!

 列車のコンパートメントの戸を開けるまで悶々と考えていた。

「あっ…!」

 だから全く気づかなかった。

「…ん?君は…」

 艶やかな黒髪の少年が、驚いて立ち止まるハリーを見る。 誰もいないと思って開けたコンパートメントには、既に先客が腰を落ち着けていたのだった。

「えっと…すみません。誰もいないと思ったから…」

 コンパートメントの先客は目を丸くしている。きっとノックもせずに入ってしまったからだろう。失礼な奴だと思われたに違いない。
 いたたまれなくなったハリーは苦し気に言い訳して相手の反応を伺った。嫌な顔をされたら出ていこうと思っていた。

 しかし、 

「ああ、そうなの。こちらこそ驚いてしまってごめんね」

 ハリーの予想に反し、コンパートメントにいた少年は人好きのする笑みを浮かべた。

 少年はまだあどけなさが抜けきらないものの、かなり精悍な面立ちをしている。きっと将来はすごくハンサムになるにことだろう。多分、ハリーが今まで出会って来た中では断トツの美少年だ。

 ハリーは少年を一目見ただけで妙な緊張感に襲われた。額に汗が滲み、体中の関節がぎくしゃくした。
 どこぞのスターに会ったような気分だ。この少年にはハリーをそんな気にさせるオーラのようなものがあった。

 ハリーはカクカクとマリオネットのような動きで、その少年の斜め向かいに座った。

 ちらりと少年を盗み見る。彼は黒表紙の分厚い本を読んでいた。

 伏せがちな瞼から覗くオニキスのような瞳が文字の羅列を追っている。長い睫毛が時折震えた。
 スッと通った鼻筋を辿ると、鼻先は少し尖っていることがわかる。ピタリと閉じられた唇は薄く、口角は上向いている。
 肌は白いが不健康な白さとはまた違い、洗い立てのシーツのような清潔感があった。

 ハリーは不躾だと思ったが、暫く、その少年の作り物めいた顔を眺めていた。


「……そんなに見つめられると、穴が空いてしまうよ」

 パタン、と本が閉じられた。

 ハリーはハッと我に返る。同時に、両頬に燃えるような熱が集まった。少年と目が合い、肩が揺れる。

「僕に何か用かい?」

 少年が優雅に足を組み換えたながら、ハリーにそう問うた。

 …別に用があるわけじゃない。罰の悪さを感じたハリーは「うッ」と口ごもる。

 少年は苦笑いをした。

「僕はリドル・マールヴェルトだ。君は?」

「あ、その、ぼ、僕はハリー・ポッターです!」



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