formation of cheering [ 4/11 ]
今日の三月は、なんだか様子がおかしい。
朝ご飯を食べるとき大人しかったり、レッスン中なかなか動きが合わなかったり、ナギが話しかけても反応が薄い……。
いつもより明らかに元気がない三月をみかねて、一織なら何か知ってるかも、と一織を部屋に招いてそのことを聞いてみたところだった。
「三月が恋…?!!」
一織の情報によると、それは昨日の出来事だったらしく、なんと相手に一目惚れしたそうだ。
「へー!へー!それでそれで?」
メンバーの恋事情なんて、一度も聞いたことがなかったからついついテンションが上がってしまう。
「落ち着いてください、七瀬さん」
そわそわしてる一織も人のこと言えないと思うんだけど俺…!
「私たちの家がケーキ屋を経営していることはご存じですよね?」
「うん!確か『fonte chocolat』だよね」
「そうです。
それで、昨日実家の手伝いに行ったら目の前にケーキ屋が建てられていて、怒った兄さんと突撃したところ、そこの店員に一目惚れしました」
「うわーーー見たかったよそのときの三月!!」
「本当にかわ……、恋する乙女のようでした」
「へーー!!!」
三月が恋かあ……。
なんかこっちが恥ずかしくてにやにやしちゃうなあ。
「どんな人だったの?」
「そうですね…。
まだ一度しか会ってませんけど、穏やかで優しそうな人でしたよ」
「そうなんだ!俺も見てみたいなあ、その人」
パティシエだから、髪の毛とか長そうだなあ…。俺の勝手なイメージだけど。
「あんな兄さん、初めて見ました」
「もしかして、初恋なの?」
「ええ、おそらく。だから、兄さんの恋に協力したいんです」
お節介かもしれませんけど…、と俯く一織。
今まで生意気、とか思ってきたけど……なんていい弟なんだ一織!!
「一織!俺も手伝う!!」
「七瀬さん…!」
俺たちが密かに三月応援隊を結成していたときだった。
「なーんか面白そうな話してるな、お前ら」
「大和さん!」
「いつから聞いてたんですか…」
我らがリーダー、大和さんがドアの隙間から現れた。
「三月が恋…?!!、らへんから」
「最初からじゃないですか!」
「大和さん、仲間に入りたかったけど入りにくかったんだよ、きっと」
「なんかそれ俺がかわいそうな子みたいになってるぞ、リク」
とりあえず大和さんを中に入れて作戦会議を開いた。
(大和さんも自然と三月応援隊に…)
「ていうかもう6人で全力サポートしたほうがよくないか?」
「多すぎます。兄さんにばれます。あくまで兄さんにばれないようにするのが最善策です」
「お、おう…。すまん」
「ナギとかすぐに食いつきそうだよね。
その人に会ったらナンパしそ……」
そう言っている途中、3人でハッとなって気づいた。
「とりあえずナギはだめだ」
「六弥さんは危険ですね、やめましょう」
「ナギ、ナンパ癖なんとかならないかなあ…」
なにかいい案がないかと頭をフル回転させてもなかなかいい案が浮かばない。
「イチ、ミツが惚れたやつの名前、なんていうんだ?」
「あ、そうだった。聞いてない」
視線を一織に向けると、一織はすこし考えた後、口を開いた。
「………知りません」
「「え」」
「そういえば、聞いていませんでした」
うん、まずは相手の名前から知らなきゃだね。