03


温かくなったシャワーのお湯を頭からかぶる。
冷えきってしまった体、とくに足の指先なんかは真っ赤になっていて、お湯がかかるとちょっぴりヒリヒリした。


私は今お風呂にはいっている。

遡ること20分前―――







「……手当て?」


朔名のとんでもない勘違いをグラサンをかち割ることで私が真剣だと身に染みてもらい(ちなみに兄は割られたグラサンをみて嘆いていた。ざまあみろ)、今までのあらすじを簡単に説明した。



「傷は浅いほうだけど、ほっといたら悪化しそうだったし」

「あぁ、だから彼そんな格好してたのか。ちょうど芹菜の頭で巻いてある包帯見えなかったからさ」

「うん、まぁそんなとこ」

「………で?」

「は?」

「男の上半身をみた感想は?」

「そっちの話から離れろ」






でもいいところで帰ってきた。
今の私は疲労+冷えで体調があんまりよろしくない。



「お願い私と代われ」

「何で命令口調?まだ不機嫌なの?」

「家まで運んだのは私だから私に責任があるのはわかってるけど、このままじゃ私まで熱だしちゃいそうだし……」


しゅんと眉を下げると朔名も少し困ったような顔をした。



「だから先にお風呂にはいってる間に手当てをお願い!!もちろん、お風呂上がったら私も手伝うから」

「いやぁ……俺も雨で濡れたから風呂に入ろうと思「ほんとやってくれんの!?ありがとー助かるわぁ」あれ、がん無視ですか?」





というわけで冒頭にもどるのである。





頭も洗って体も洗って泡を全部流したところで湯船につかる。
体の芯からじわぁっと温まってきてとても気持ちがよい。
どんどん疲労が回復しているような感じさえしてくるから不思議だ。



それにしても、とふと思った。

何で彼はあんなに傷だらけだったんだろう。
転んでできたような傷には見えなかったし……。


「まさか不審者に襲われたとか?」



私の声がお風呂に響くがすぐに首をふった。

わざわざ男を狙う不審者がいるかな?
まぁいないってことはないと思うけど……うーん……。


テレビとかでよく『〇〇さんが襲われました』って聞いたりするけど、いつも他人事だと思ってたからなぁ。

怖いなーとは思っても心のどこかで私には無縁のことだと決めつけていたから、いざ今回のように傷だらけの彼を見ると身震いする。

本当に不審者に襲われたのかはわからないけど。





「あーもう!!ダメだ、考えるのやーめたっ」


いるかいないかわからないその不審者のこと考えたってしかたない。
彼と出会ったことを機縁に気をつければいいんだから!!



本当にこれでいいのかはさておき、私はお風呂から上がってグレーのスウェットに着替えて頭を乾かしてからリビングにもどった。

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