03


「どーお朔名、終わった?」

「ん、芹菜か。終わったよ。足の傷口んとこにも包帯巻いといた。このまま安静にしてれば大丈夫だな」

「そっか、ありがとう」

「…………でさ、玄関からこのリビングまでの濡れた廊下なんだけど、」

「うん、ありがとう!!」

「……ああ、うん……もういいや」



諦めたような顔をする朔名。
だってせっかくお風呂で綺麗になったのに掃除なんて嫌だもん。
朔名も多少濡れてるけど私ほどじゃないから大丈夫でしょ。



「じゃあ私は夕飯作ってるね。今日はちょっと寒いからあったかいクリームシチューでいい?」

「おう。俺も終わったら風呂はいるから」

「うん、わかった」



朔名はタオルをとりにいき、私はキッチンで料理をはじめた。





クリームシチューってすごいよね。
わりと簡単にできるのに野菜の栄養を逃がさずに食べることができるから。
私はあんまり牛乳は好きじゃないけどクリームシチューのときは大好き。


気分がよくなってノリよく作っていると料理はすぐにできた。
テーブルにクリームシチューとポテトサラダとクロワッサンをいくつかお皿に盛って置く。



ちょうど朔名もお風呂からでてきたようで、頭からタオルをかぶっている。


男ってお風呂はやいよね。
烏の行水だ。



「芹菜ー、飯できたー?」

「ちょうど今できたよ」

「俺もう腹減った。掃除の疲労だこれきっと」


朔名は私と向かい合わせに座る。
私も同じく椅子に座った。
左隣にはソファで彼がまだ気を失っている。
身体中に巻いてある包帯がかなり目立ってみえた。






夕飯にありつけているとき朔名が言葉を発した。


「こいつ、何で傷だらけなんだろうな」

「さぁ……私も考えたけどよくわかんない」

「不審者が男を狙うとは考えにくいしな、しかも雨とはいえわりと人通りの多いこの住宅街で」

「それは私も同感」

「もしかして顔がいいから狙ったとか?」

「…………は?顔が……何?」

「なんだ、芹菜はこいつの顔みてねぇのか?」



いわれて私は箸を止めて彼に視線を移した。




「わぁ……美少年……」


思わず口にした言葉がこれだった。
眉も鼻も口もスッととおっていて輪郭もとても綺麗。
肌もつるつるで、男にしては白いほうだけどそれがまた綺麗さを引き出しているようだ。

髪はさらさらで紫色。
紫なんて初めてみたけど綺麗に染まるもんだなぁと関心する。
前髪にヘアピンとか、ピアスをしててちょっとチャラそうにみえるけど、顔は童顔っぽいからあんまりそんな印象は受けない。



ずっと傷口ばっかりに目がいってたから気づかなかった。
まさかこんなに美少年だったとは!!



「な、すげぇイケメンだろ?」

「たしかに!!」

「惚れた?」

「朔名が?」

「俺が惚れたらいろいろとマズイ」



だろうね。

でも男である朔名だって彼が美少年だということを認めているんだ。
なんだか芸能人に出会ったような気分だ。





そんな会話を続けていると、ふとソファから動く音が聞こえた。

えっ、と思って振り返ってみると、ゆっくりとソファから起き上がる美少年の姿が。



「……」

「……」

「あ、起きたのか」



起きた美少年はそのままソファに座りながら辺りを見回している。

なんかこう探られているような感じがして緊張感が芽生えた。

そして私達のほうに視線を向けてそのまま動かない。



な、何だろう、なんか言いたそうだけど。
あれか、お前らは誰だ的なやつか。












「おなかすいたんだけど、何かある?」





私は目をぱちくりさせた。



03.今何て言った?

(何今の。緊張感の欠片もない)


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