02


脱がせたYシャツを湯船の縁にかけ、シャワーの水を傷口に当てて菌を落としていく。

コレ絶対意識あったら痛いだろうなぁ。





15分くらい洗い流してシャワーの水を止めた。
そして清潔でなるべく柔らかめのタオルで拭いていく。

血もだいぶ洗い流されてタオルはさほど赤には染まらなかった。


積み重ねてあるバスタオルを手にして彼の体に巻きつけ、またソファまではこぶ。




あああ腰が痛いよ、重いよ。
私はいったい何をしているんだ。
他人のためにこんなに世話をやいたのは初めてだ。
こんなことがしょっちゅうあっても困るけど。



何回もはこんだ疲労のせいで若干頭がおかしくなってきた。
ソファにゆっくりおろして、私はその場にぺたんと座りこむ。

私自身も雨で濡れているからリビングがびしょびしょになったがもう気にしない。


彼に巻きつけたバスタオルをとって、テーブルに置いた救急箱から包帯とハサミをとりだす。

ちゃんと圧迫してこれ以上血がでないようにしなきゃね。




本当は病院でちゃんと治療したほうがいいんだろうけど、生憎この近くに病院はない。
うちには車はないし、あったとしても免許証がない私じゃ無意味である。




こんなことしかできないけど、ここまでやった以上できることはやろう!!






まずは1番傷口が多い腹部から始めよう。


包帯を彼のお腹から背中にまわしてまたお腹へと巻いて、それを何回か繰り返す。
圧迫のためきつく巻いていくのは案外力仕事だった。





1ヶ所巻きおわって、ふぅとため息をつく。
まさかこんなに疲れるなんて。


2度目のため息をついてまた作業に取りかかろうとすると、ガチャッというドアが開く音が聞こえた。




「芹菜ー、玄関から廊下がすんごい濡れてんだけど……」

「あ、朔名」





リビングのドアの前で怪訝な顔をしているのは私の兄である朔名だった。


朔名は私の前のソファに横たわっている彼をみて目を丸くした。


「えっ、誰だそいつ?」

「あぁ……これは……」




どう説明すればよいかと言葉を濁せば、朔名は何か納得したような顔をして笑みを浮かべていた。




「ああ悪い、邪魔したな」

「…………は?」


何だか嫌な予感がするのは気のせいか?



「もう高3だもんな、芹菜は。そういうのに興味がでてきたか」

「……」

「にしてもいきなり相手を上半身裸にするなんて大胆「何勘違いしてんだよこの万年発情期が」万年!?」



気のせいじゃなかった。
まったくとんでもない勘違いをしてくれたもんだ。

こっちはお風呂にも入らず疲労感に襲われながら手当てしてるっていうのに。
なんてお気楽な頭なんだ。




私はハァと今日何回目だかわからないため息をついた。



02.傷だらけの君

(イライラするなぁ、もう)
(あれ、もしかして俺のせい?)
(あああ朔名のそのグラサンかち割りたい)
(何その俺=グラサンみたいな発言)


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