16


今日は土曜日、しかも朝が早い。


普段ならまだ当たり前のようにぐっすりと寝ているころだ。



眠たい目を無理やりこじあけてあくびをひとつ。




窓の外をみれば今日は晴天だということがすぐにわかるくらい太陽がまぶしい。





犬を連れて散歩をするおばさんたちが目にはいる。

年をとると朝が早くなるとは聞くけど私もそのうち早起きになるだろうか。



だが学生であるからには若いときでも早起きができるようになりたいというのが本望である。






とまぁそんなことを考えながらベッドから降りて服を引っ張り出す。

今日はある場所に出掛けるからあんまり適当な格好はできない。



紺色のボーダーTシャツに白いカーディガン、ボトムスは春によく着るチノパン。



私的にはこれはすごいお洒落な格好だ。
慣れないけど第一印象のためにも!!





よしっ、と意気込んでさっそく着替え始める。




ガチャ


「おーい芹菜、起きたかぁ?」

「…………」

「…………」













「今から地獄めぐりはいかが?」

「お邪魔しましたあああああああ」



いくら兄妹でも許されません。




着替え終わってリビングにいくと朔名はちょうど朝食中だった。

私の姿をみるなり冷や汗だらっだらでゆっくりと目をそらされた。


自業自得だばかやろう、許さん。




「ていうか、あれ?翔音くんは?」

「あ、あぁ。まだ起きてねえみたいだな」

「起こしたほうがいいよね」



今日は出かけるんだからってことで私は1度降りてきた階段をまたのぼる。

その途中、朔名に頼めばよかったと後悔したがまたもどるのも面倒なのでそのまま翔音くんの部屋に向かった。






部屋の前までいくと、まずノックをした。


応答なし。




部屋にはいってみると、奥のベッドにふくらみが1つ。


布団がぐるぐる巻きになってまるでミノムシのようだ。
わりと寝相が悪いとみえる。



これじゃあ布団をひっぺがえせないじゃないか。





……布団ごと転がすか?





なんて、いい起こしかたが見つからず酷い方法が頭に浮かぶ。




あ、枕をぬきとればいっか。



思い立ったらすぐ行動。
今日は忙しいんだから手っ取り早く済ませたいからね。



翔音くんの頭の下にある枕に手をかけ、思いっきり抜き取った。





ボスッ


「………っ」



布団にうもれる音がして、翔音くんは目が覚めた。


ベッドから起き上がって目を擦ってる翔音くんはまだまだ眠そうだ。



「おはよー翔音くん」

「…………………はよ」



相変わらず寝起きの声は顔に似合わず素晴らしいほど低い。




「……まだ眠そうだね」

「……無理やり起こされたからね」

「うっ……、で、でも今日は早く出かけるし」

「……普通に起こしてくれてもいいんじゃない?」

「そ、それは………」




思い付かなかったから適当に起きる方法でやったなんて言えない!!




「……………」




こっ、怖ぇぇぇぇぇ!!!!

超睨んでるぅぅぅ、寝起きだからさらに不機嫌なんだきっとぉぉぉぉ!!




「え……と……、」

「………………」

「わあああすみませんでした睨まないでえええ!!」




思わず土下座してしまった。
もう恥とか知らん、だって怖いんだもん顔が……いや、オーラが。



翔音くんは呆れたようにため息をついた。






「寝癖、また直して」

「……へ?」

「それで今の無かったことにする」

「………………………」

「…………何」

「いいいいえ何でもありますぇぇんっ」




チャラにする条件が可愛かったなんていったら………。



殺られる!!



私はため息をつきながらドライヤーとブラシと寝癖直し用の水をリビングへと持ってきた。


翔音くんは朝食のトーストをかじっている。




「時間ないから食べながらで悪いんだけど、髪とかしちゃうね」

「…………んむ」




………返事のつもりだろうか?





ブォォォって音とともに髪を濡らしながらとかしていく。
相変わらずなんてさらさらな髪なんだ羨ましい。


けどそのかわり寝癖が酷すぎる。
まるでライオンの鬣(たてがみ)のようだ。

……まぁさっきの睨みはライオンより怖かったけど。





「……あれ、芹菜が翔音の髪とかしてやってんのか?」



シャコシャコと歯磨きしながら洗面所からもどってきた朔名はリビングの光景をみて目をぱちぱちさせている。




「ま、まぁね……なりゆきで」

「……まるで夫婦みた「消え失せろ」」




「はい、寝癖直したよ」

「ん」

「食べたら着替えてね」

「ん。…………あ」

「え、何?」

「………髪、ありがとう」





感謝の言葉、教えた通りに覚えててくれたんだ。


「どういたしましてっ」




私は満面の笑みをうかべた。





(準備できたかぁ?そろそろいくぞー)
(……俺まだ着替えてない)
(そうなのか?芹菜、着替えも手伝ってやれよ)
(それはお前がやれ)


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