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「俺、翔音のこと好きっ!!」





頬杖ついていた手からずり落ちたのは言うまでもない。












放課後、どうも眠くて机で頬杖つきながらうとうとしていた。

玲夢も柚子も部活ですでに教室にはいない。
帰宅部という立派な部活にはいっている私は、今日の練習メニューがないので暇をもてあましていた。

そんなもう寝るぞーなんてときに私の席の前に人影ができた。

そして冒頭にもどるのだが。







「…………」

「あれ?聞いてる?藍咲ーっ」

「うん。聞いてる聞いてる」

「俺さ、好きなんだ翔音のことが」

「うん。聞いてる聞いてる」

「これからどうしようとか思ってんだけどさ」

「うん。聞いてる聞いてる」

「…………」

「うん。聞いてる聞いてる」

「聞いてねーだろうがあああああ」



嘆くこの男、橘圭祐。



「そっか、好きなんだね」

「おう」

「それで私にどうやったらデートに誘えるかを聞きにきたと」

「なんで野郎をデートに誘うんだよ俺がそっちの趣味に見えますかっ!?」

「だってこれからどうしようって言ってたじゃん」

「友達になりたいからどうしようっつったの!!」

「なーんだそうだったんだ。てっきり付き合ってデートしてゴールインしたさに悩んでたのかと」

「ゴールインって何!?まるで俺が恋する女の子みたいじゃんありえねーよ!!」

「おっ、そうなれば翔音くんと付き合えるじゃないか」

「男やめろと!?」







今気づいたんだけど、橘くんてとても面白い。
新井くんとは違った意味でぽんぽん会話が進む。


私の中で橘くんが“目立ちたがり屋のいじられキャラ”というポジションにインプットされた。

うん、おめでとう。






「……友達になりたいっていっても……、普通に話してればいつの間にか仲良くなるんじゃない?」



いつまでもいじっているのは可哀想なので私は真面目に相談にのることにした。

運良く翔音くんはまだ帰っていないみたいだけど教室にはいないので聞かれる心配もない。


橘くんは私が話を聞いてくれるとわかって私の左隣の柚子の席に座った。



「でも俺あのタイプのやつと友達になったためしがなくて」



あのタイプとは無口のことをいっているんだろうか。



「じゃあなんで翔音くんのこと好きだなんていったのさ」

「そりゃあもちろん俺の頭にビビッときたんだよ。こいつ絶対いい奴だってな!!人を好きになるのに理由とかいらねーだろっ」




当然といわんばかりの自信たっぷりの橘くんに私は目が点になった。

そんなにいうならその気持ちをまっすぐぶつければいいんじゃないか?

「藍咲なら一緒に住んでるからわかると思ってさ」



そんなこといわれてもなあ。

私のときといえば、自己紹介したものの無視されて食事になると食らいついてきて買い物になると無邪気な子供みたいでツッコミざるを得ないしで。



そんなに何か特別なことはしてない、というよりできないね。





む、難しいぞ。
あれ、友達をつくるのってこんなに苦労するっけ。



「……もう、普通に友達になろう的な感じでいいんじゃん?」

「なげやりだなおい!!つかそれなんか恥ずかしくね……?」

「友達づくりは誰だって勇気がいるのだよ橘くん」

「結局ふりだしにもどっちゃったじゃねーか!!」





あぁ、会話が進まない。


“あああああ”とか嘆いている橘くんをみるとため息がでるが、それだけ友達になりたいという気持ちがみえてとても嬉しく思う。


玲夢たちに関してはすでに会話(という名の一方的なくだり)もしてるけど、橘くんみたいに正面から向かってくる人はいなかったからね。






そんなことを思っていると私の後ろに影がさした。

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