14


「あ、翔音くん」



後ろを振り向くと彼は鞄をもってこっちを見下ろしている。



「……帰らないの?」

「え?あ、帰るけど……今ちょっと橘くんと話してて……」

「……」

「……」

「……」

「……えと、先帰ってても大丈夫だよ。もう道覚えたっしょ?」

「…………一緒に帰らないの……?」

「…………」








な、なななななんだこの美少年。
首傾げながらそんな捨てられた仔犬みたいな声で言われたら……。




可愛いじゃねえかあああああ。
どこでそんな技術身に付けたんだおい!!

ち、ちくしょうヤバイ、可愛い!!

それと同時になんだか複雑だ、悔しいぞ私。
男でありながらこんな仕草をしただけでこの威力、半端じゃない。

さすが“美”少年 なだけはある。




私はどうすればいい。
ここで負けてはならんぞ、屈するな、屈してはならんぞ私ぃぃいい。






ガタンッ




私の後ろから椅子が倒れる音がした。
振り替えると橘くんが拳を握りながら立っている。
表情はみえない。

でもわずかに震えている。




な、なんだ、どうした?





「お、おれ……」

「……?」

「おおお俺とっ、とと、友達に、なああありませんかっ!?」





私の頭上で翔音くんに向かって差し出された右手。
顔をみれば髪と同じくらい真っ赤になっている。
よっぽど言い出すのが恥ずかしかったとみえる。


翔音くんをみれば目をぱちくりさせて橘くんを凝視している。
まだ状況がつかめていないようだ。







あれ、何この雰囲気。
私の頭の上で体育館裏の告白現場が繰り広げられてるぞ!!



「とも、だち……」


未だに目をぱちくりさせている翔音くん。

どうしよう、ここは間を割って私が進行していかなきゃいけないパターンなのか。


つーかこんな大事な事を人の頭の上でやるなよ居ずらいだろうが空気読め。





バッと出された橘くんの右手。
顔はうつむいていて少し震えている。




やっぱり私が進行するのかと思っていると、その右手はもう1人の右手と繋がった。



その瞬間ガバッと勢いよく顔をあげた橘くんは自分の右手と握手している人物をみて口をぱくぱくさせていた。




「え、マジで……なってくれんのっ!?」

「……ん」



コクりと頷いた翔音くん。

その答えが余程嬉しかったのか、橘くんはぱぁぁと笑顔になって思いっきり翔音くんに抱きついた。


「よっしゃあああありがとな翔音っ、これからよろしくな!!」




抱きつかれた翔音くんをみてみると、私は驚いた。
いつも無表情な彼が大きく目を見開いているからだ。
彼の両腕は抱き締め返すことができず空をわたわたとさ迷っている。
こんなにはっきりした表情の翔音くんは初めてみた。






やっぱり、友達の存在は翔音くんを成長させてくれるんだね。



抱きつかれて混乱している翔音くんに私はコソッという。




(こういうときはね、こっちも“よろしく”っていうんだよ)



私に視線を向けた翔音くんは納得したようで、ゆっくりと口を開いた。






「よ、よろ……しく」



14.赤髪少年の苦悩

(ほんと定番中の定番なやり方で友達になったね)
(なんかもう気づいたら体が動いててさ)
(好きな先輩にラブレター渡す女の子みたいだったよ)
(リアルに自覚あるからやめてくんねええええ!?)


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