12


今日の昼食、私はカルボナーラにした。
パスタの中ではこれが1番好き。




玲夢たちがもどってきたあと、私も料理をとりにいった。


だが何故かあの2人も一緒にだ。


席順は私を12時の位置の席とすると、時計回りに私、新井くん、橘くん、柚子、玲夢、翔音くんの順だ。



どうしてこの2人……特に新井くんが私の隣なんだ。
私の右隣が翔音くんということで、新井くんはニコーッと私に無言で笑いかけてくる。



私にどうしろと?






みんな料理をもってきて、さぁ食べようとしたとき。





「……いただきます」




私の右側からそんな言葉が聞こえた。

私も含めてみんなぽかーんとしている。
まぁ学園とかお店とかって家と違って言わない人多いしね。
私もその1人だし。

当の本人はそんな視線には全く動じず、黙々と食べている。




この言葉は私が初めて翔音くんに教えた言葉だ。



『――……まぁ食べ物に感謝していただくってことかな。命をいただいてるわけだから、残しちゃダメなんだよ』




ちゃんと覚えててくれたんだ。

教えたかいがあったかな。











「何笑ってんだ藍咲?」

「……え」



橘くんに話しかけられ私はハッとする。


「なんかすげぇ優しそうに笑ってたけど。翔音見ながら」

「そ、そう……かな?」

「へぇー……、やっぱり藍咲サンって」

「ま、まさか芹菜っ……翔音くんのこと……」

「少なくともアンタら2人の頭に過っていることは絶対にないから」

「なんだ、残念」

「何を思って残念なんですか」



“残念”とかいっているわりにはニコニコしている新井くん。

その笑顔が不気味だよ、思わず敬語で喋っちゃったじゃない。



「でさ、ほんとのところ芹菜って翔音くんとどこまでいったの?」

「ぶふぅぅっ!!!!」

「あ゛あ゛あああ何吹き出してんだよっ!!おっ……俺のモンブランんんんん」




ちょうどオレンジジュースを飲んでいたときに玲夢がびっくり発言するもんだから加減なしに吹き出してしまった。

そして私の左側にいる橘くんのモンブランにびちゃーっと。




「あ、ごめん」

「ごめんで済むレベルか!?つかなんで左側にいる俺の方向いて吹き出すんだよ!!」

「だって正面向いたら柚子にかかっちゃうし」

「俺ならいいってか!?差別っ!!」

「……でもほら、オレンジジュースとモンブランの神秘的なコラボレーション」

「何新しい発見してごまかそうとしてんだあああああ」

















「まずいっとくけど、私と翔音くんは付き合ってません」




私が吹き出したジュースを片付け、それがかかってしまったモンブランも回収した(同時に橘くんが落ち込んだ)。



「ですが金曜日一緒に帰っていらしたのを私と玲夢さんが見ましたけど……」

「藍咲サンはね、翔音クンと同棲してるんだよ」

「え、それほんと!?羨ましいっ。ってかそれってやっぱり付き合ってるっていわない?」

「川上サンもやっぱりそう思うよねー」

「ねーっ」




“ねー”じゃねぇよ何意気投合してんだお前らああああ。
しかも同棲って何かいろいろと紛らわしい!!
間違ってるわけじゃないけど、一応兄の朔名もいるからねっ(一応扱いなのはさておき)。


私はとりあえずさっき新井くんたちにいったことをそのまま説明した。

もしかしたら翔音くんに不思議な顔されるんじゃないかと思ったが、彼は食事に集中しているようで毛ほどにも気にしていなかった。



「じゃあ芹菜ん家いけば毎日翔音くんに会えるんだね!!」



なんて喜んでる玲夢だけど、わざわざうちにこなくたって貴女毎日学校で会うじゃありませんか。





そんな感じで私たちの付き合ってる疑惑はなんとか晴れたみたいだ。

クラスとかの噂は、どうしよう。
一々説明するのも気がひける。


でもまぁ噂も日が経てばなくなるとかいう諺もあったよね、確か。
忘れちゃったけど。




そんなことを考えている今は6時間目、教科は日本史。
正直苦手な科目である。
人の名前とかありすぎてわかりにくいし。



「俺は過去にはこだわらないっ!!」


なんて発言したお馬鹿1名(赤髪くん)にクラスはどっと笑っていたけど、こだわらないと卒業できませんから。




ちらっと後ろを見てみたけど、初めての学園生活に疲れたのか、翔音くんは机に突っ伏して寝ているようだった。

ま、基本的ずっと机に向かって教師の話を聞きながらノートをとるだけだから飽きるのも仕方ないけど。


この退屈な作業を義務教育時代から続けてきた私たち生徒は実はすごい忍耐力なんじゃないかと思ってしまう。



同時に平凡な暮らしだなーと嬉しいような、もっと何かあってほしいような複雑な気持ちになるのも確かだった。

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