11


食堂につくと、いつものように生徒がたくさんいた。
うちの学園はバイキングだからここにくる生徒が多いのだ。
まずは席を確保しなきゃね。



「じゃあ私、みんなの分の席とっておくね」

「いいんですか?ありがとうございます」

「んじゃお先に料理とってくるね!!翔音くん行こっ」

「……ん」



玲夢は翔音くんの腕を掴んで小走りで料理があるところまでいった。
微笑みながら柚子も後ろからついていく。

翔音くんは腕を掴まれても嫌な顔ひとつせずにおとなしくついていっている。

普通だったら初めて会った人にそんなことをされたらちょっとくらい困った顔とかすると思うのだけれど……。



あれ、私だけ?





「じゃないや、早く席とらないと」


あまり深く考えないようにしてさっさと席をさがした。



あ、1番奥の席けっこう空いてるじゃん。


よかったと思い、小走りでその席に向かい座る。
あとは待つだけだ。
今日は何を食べようかな。
無難にパスタとか。

……パスタって無難か?






「藍咲サン」




あれこれ食べたいものを考えていると、横から誰かが話しかけてきた。

声がしたほうに顔を向けると、緑色の髪が目にはいる。




「隣、いいよね?」



妖艶かつ不適な笑みを浮かべるこの男。
確か同じクラスの新井光……。




というか、今年初めて同じクラスになった人だから話したこと1度もないんだけど!?

しかも有無を言わせない問いかけだし!!




「え……と、どうしたの?」


私の返事を聞く前に隣に座った彼に少し苦笑いして問いかけた。



「んー、何が?」

「いや……私、新井くんと話したことないし。いきなりだし……」

「うん、ちょっと藍咲サンに聞きたいことがあって」

「聞きたいこと?」



私はきょとんとする。
何か彼に疑問をもたせるようなことをしただろうか。



「俺見ちゃったんだよね」

「……何を?」

「この前藍咲サンが「光うううっ、お前こんなとこにいたのかよ!!」」



新井くんの言葉に重ねてまた別の誰かの声がした。
駆け寄ってきたのは赤髪の人。


今思ったけど、この学園の校則ゆるいよね。
頭がみんなカラフルすぎる。


日本人は基本黒髪だぞ。
私なんてまだ染めたこともない健全な髪なんだから。



「なんだ、圭祐か」

「なんだじゃねーよ探したんだからな。お前俺置いてどっかいっちゃうし!!しかもこんな1番奥に…………あれ、お前藍咲じゃん」



ぷんすか怒っていた赤髪くんがやっと私の存在に気づいた。


私、影薄くない?




「なんだよ、こんな奥の席に1人で。友達いねーのか?」



なっ、失礼な奴だな!!
普通本人にそんなこと聞くか!?
全く悪気がないのが心に刺さる!!



「と、友達を待ってんの。私は席をとってるから」

「あ、そっか」


納得した赤髪くん……あれ、名前なんだっけ。

というか早くここから退散してくれないかな。
みんな戻ってきちゃうし。
新井くんなんかもうちゃっかり私の隣に座ってるし。




そういえばさっき新井くんが何かいいかけてたけど……。



「あの、さ……新井くん、さっき何を「なぁなぁ、藍咲ってあの転入生と付き合ってんの?」……あ゛ああ!?」



私の言葉に被せてきた赤髪くん。
彼の驚きの質問に私は女らしからぬ声をあげてしまった。



「うわお、女の子にあるまじき返答の仕方」


新井くんが隠そうともせずにクスクス笑っている。



何なんだこの2人は。



「で、付き合ってんの?彼氏なの?」

「俺もそれが聞きたくてここに来たんだよね」



赤髪くんは目をきらきらさせて興味津々。
新井くんはテーブルに頬杖つきながらこっちをみて怪しげな笑みを浮かべる。




「な、何でそんな話を……?」

「先週の金曜日、あの転入生と下校してたでしょ?」

「……」

「あとあと、俺ら土曜日デパートで藍咲と翔音が2人でいるの見つけちゃったんだっ」

「……」

「学園で噂になってるよ?金曜日の時点で“藍咲芹菜にものすごい美少年の彼氏がいる”って。今日の朝教室入ってきたとき注目されてたでしょ?」







なんてこった。


そんな噂があったなんて今初めて知ったぞ。

百歩譲って買い物現場を見られたのはよしとしても、その噂は果てしなくめんどくさい!!

ちょっと話すだけでもちやほやされるじゃない!!




「噂がそうであっても……、私別に付き合ってないからね」

「え、マジ?違うのか」

「違うよ。あれはただの買い物」

「ふーん……、じゃあ金曜日に彼が迎えにきてたのは?」

「そ、それは……っ」



確かにまだ金曜日の時点では翔音くんはこの学園の生徒じゃないんだから一緒に帰るのも疑われるよね。








「じ、実は翔音くんはうちの遠い親戚の子で、両親が海外転勤している間一緒に住んでる……んだ」



全部口からデマカセだけど、こういうしかない。

翔音くんが傷だらけだったことや、何も覚えていないこと、こんなこといって彼を傷つけたくないしね。

でもあながち嘘っぱちってわけじゃないし。




「へぇー、同居人、ね」

「なーんだ、彼氏じゃないんだ。つまんねーの」



つまんなくねーよ面白がるなっ。



「でも同居してるなら彼氏になる確率アップするんじゃない?」

「しないから。ないから絶対」

「もったいないね、もう2度とあんな美少年には出会えないよ?」

「“出会えないかも”じゃなくて“出会えない”なの?どこをみて判断したんだオイ」

「そりゃあ君の普通の顔でしょ」

「悪かったな可愛くなくて。これは遺伝子的な問題であって……、」

「別に誰もそんなこといってないけど」

「え……」

「俺のタイプじゃないけどね」

「このやろう」




一々突っかかるような言い方に私はイラッとくる。
ほんと早くどっかいってください。





「んーでもまぁ、受け答えは十分面白いと思うけど?」



ニコーッとしながらいってくる新井くんの言葉は本気なのだろうか。






全くつかめない奴と知り合ってしまったようだ。



11.何だこいつら

(そういえば赤髪くんの名前って何?)
(えええ!?……会話してたのに俺の名前知らないの……?)
(ちょ、何でそんな落ち込む!?)
(これの名前は橘圭祐だよ)
(“これ”…………)
(もっと落ち込んだあああああ)


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