06


テレビをつけると、ちょうど音楽番組が放送されていた。
ただいまの時刻18:10。
まだ始まったばっかりか。

ソファーで見ようと思って近くまでいくと先客がいた。


「……」

「…………(パリパリポリ)」



ソファーに座って私がつけたテレビを見ながらポテチをパリパリと食べている美少年。


そのポテチはどっからでてきた。
うちのキッチン漁ったのかコラ。

ため息しかでてこないよほんと。
私昨日今日で何回ため息したんだろう。
きっとこれからも増えるだろう。




それにしても、と考える。
私は彼の体に目を向けた。
別に変な意味じゃないからね、ないからそれは。


翔音くんは今黒のVネックのTシャツをきている。
ちなみに朔名の服を貸してあげているのだ。
そのVの字からわずかにみえる包帯に目がいった。

彼は普通に動いてるし、病院にいかなくていいのかと聞いても嫌そうな顔をするのでいくにいけない。


まぁ本人が大丈夫っていうなら無理強いはしないけど……。
きっと本気で我慢できないくらいの激痛だったらなんらかの反応があるだろうから、それが見られない今はまだ平気なんだろう。


男ってよくわからない。
言えばすむことも中々口に出さないで自己解決しようとするし。

プライドっていうのかな。
あ、でもこの美少年にそんなものがあるようには見えない。
つかそんなものより礼儀を覚えたらどうなんだ。



さっきからパリパリと食べ続けている美少年。




「……もしかしてお腹すいた?」


気がついたら話しかけていた。
パリパリパリパリうるさかったし(私のポテチなんだよ)。



翔音くんはポテチを口にくわえながらコクコクと頷いた。

……なんていうか、食に関しては随分と素直なんだね。



まぁもう18時すぎたし、そろそろ夕飯つくらないとね。
多分出来上がる頃には朔名も帰ってくるだろうし。


「何食べたい?リクエストをどうぞー」



キッチンでピンクのエプロンをつけながら聞いてみるが応答無し。

無視かよと思ってリビングを覗いてみると、きょとんとした顔をしながらこっちをみていた。
だがそれも一瞬で、すぐに視線をテレビに移す。





「別に。美味ければ何でもいい」


そういいながら食べ終わったポテチの袋を近くのゴミ箱に捨てた。




かっ……可愛くねえええ。
人がせっかく親切に食べたいものを作ってあげようとしてるのに。
お腹すいたっていったのはどこのどいつだっ。



のんきにテレビをみている美少年にムッとしたが口には出さず、憤然としながらも私はキッチンにもどった。

いいさ別に、勝手に作るからっ。



今日はなに食べようかな。
昨日はパンだったしご飯のほうがいいよね。
オムライスにしよう。
そろそろ卵の賞味期限も切れる頃だし、生じゃ食べられないからね。


そうと決まればさっそく腕捲りして準備にとりかかる。
ご飯を炊いている間にサラダをつくる。
レタスやキュウリやトマトなどを食べやすい大きさに切って盛り付ける。
それが終わってご飯が炊けたらケチャップとミックスベジタブルを混ぜ合わせたりして中身をつくり、完成したら薄く焼いた卵で巻いたり……。


いつもは2人分だったから3人分つくるのは大変だ。




夕飯が出来上がったのは19:30。
わりと早くできたかも。
お腹すいたっていう翔音くんのためになるべく急いでつくってあげたのだ。

あぁなんて優しいんだ私っ!!



出来上がった料理をテーブルに3人分置いていく。
オムライス、サラダ、コーンスープ、もちろんケチャップも忘れずに用意した。

私の席はリビングの入口からみて右側、朔名は向かい側、翔音くんはソファー側のいわゆる誕生日席だ。



ガチャッ

「ただいまー」



料理を並べているとタイミングよく玄関が開く音がきこえた。
朔名が帰ってきたみたいだ。

そしてリビングのドアが開いて朔名の姿がみえた。


「おー、ちょうど夕飯か。ナイスタイミングだな俺!!」



鞄を置いて上着をハンガーにかければ手を洗いに洗面所へとむかっていった。


戻ってきた朔名、翔音くん、私でそれぞれ席についた。
今日は補習でほんとに疲れたからお腹すいたわ。




「「いただきます」」



まずケチャップをオムライスにかけて……と。
そこまでして、ふと左側をみた。
お腹すいたといったわりには手を動かしていない。
目をぱちくりさせてきょとんとしている。
無表情のくせにこういうのは少しわかりやすい。
礼儀がなくて生意気だと思っていても、こういう仕草はちょっと可愛いなって思ってしまう私はやっぱり末期なのか。

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