「筈だったんだけど」

何故かずぶ濡れになった体。階段から落ちた筈だったのに湖のほとりにいた俺。

「一体なーんでこんな事になっちゃったんだ?てか夢?つーか…」


寒い!寒すぎる!ずぶ濡れってなんだよもう。とか、文句を言いながらふと気付く。真夏なのにこんな寒いなんて異常じゃね?てか、階段から落ちた筈なのにこんなとこにいる時点で最早、異常事態か。なーんてぶつぶつ言っているうちに、背後に気配。


「誰だ?」
「それは、わしの台詞だと思うんじゃが…君は誰じゃね?」
「いや、俺が聞いたんだけど」

振り向くと、およそ日本にはいないであろう白くてあり得ないくらいながい髭を生やしたじいさんがいた。顔立ちも確実に外国人、恰好はコスプレか?といいたくなる程にとても変だった。

「ふぉっふぉ、まあそれもそうじゃのう…儂はアルバス・ダンブルドアじゃ、このホグワーツの校長をしておる。して君は誰かの?」

「ダンブルドア…ホグワーツ…?」

って、凄く聞き覚えがある……。ていうかハリポタじゃねえか!え…このじいさん頭おかしいんじゃ…いや、でもまず俺のこの状況がおかしいし…もしかして夢?そうだ、夢に決まってる。


「夢だよな。うん。なら適当に楽しむか!」
「…ふむ。君はどこから来たんじゃ」
「俺は、んーどこから来たんだろ?名前は日向蓮」
「もしや、異世界からとばされてきた、のか…ふむ。レンか…」

「あのさ、いきなりで悪いけど、俺に魔法教えて欲しいんだよね」

ダンブルドアは色々考えてるみたいだったけど、俺はせっかくハリポタの夢見てるなら魔法使ってみたいしと思い提案してみた。


「ふむ…」

ダンブルドアは透明なビー玉みたいな瞳で俺を見つめた後、「いいじゃろう、面白そうじゃし」と言って俺の手を握った。その瞬間、ぐにゃりと世界が曲がった。



「うえっ」
気付いたら部屋にいた。多分ダンブルドアの校長室だろう。壁に人の写真が並んでいる。多分歴代の校長…その写真達はひそひそと喋りながらこっちをちらちらと見ていた。

すげーな、魔法…と小さく呟いて部屋を見回していると、後ろから声がかかった。いつの間に用意したのか、ティーカップを差し出して微笑むダンブルドアがいた。

「飲みなさい。体があたたまる」

いつの間にかすぶ濡れだった髪や服は乾かされていて(多分ダンブルドアの仕業だ)紅茶の温かさが身に染みた。


「ありがとう」


本当に夢なんだろうか。俺はそう思い始めてきた。さっきの姿現し?かなんかの感覚といい、この温かさといい…なんだか現実みたいだ。