カップケーキ戦争 2
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 人生はひとつ躓くと、その後もケチがついてまわるものらしい。



「それは大げさ」

 珍しく哲学的(?)なわたしの発言に、ジャージの袖を捲り上げて冴香が言った。わたしはその隣に立って、スポーツドリンクの粉末の袋を彼女に手渡す。

「だってさー」

 ぼやくような口調で、冴香に訴えた。

「午後は一回も曽根と話せなかった……」

 それどころか、目も合わせられなかったのだ。

 昼休みが終わって曽根が帰ってきたのは、五限目が始まるギリギリの時間だった。先生と一緒に戻ってきた彼は授業で使う教材を抱えていたから、マミーの予想通りの展開だったらしい。そして次の時間は教室移動だったので、バタバタしてしまい話はできずじまい。

 そんな状態で放課後を迎えたわたしは、部活の準備をする冴香を手伝いながら泣きついているわけなんだけど。

 はぁ、とため息をつくわたしに、冴香が袋をガサガサさせながら言う。

「まだ午後よー。時間はあるでしょ?」

 そりゃ、曽根の練習が終わるまで待ってればね?

 そうなんだけど。

「遅くまで待ってると、怒られるんだもん」

「誰に?」

「曽根に」

 即答したわたしに、冴香が「はあ?」と眉をひそめた。なのできちんと説明する。

「帰りが遅くなると心配なんだって……わたしと曽根、駅から方向が逆だから」

 曽根は基本自転車通学で、わたしはバス通学。一緒に帰れるときは駅までは送ってくれるんだけど、真逆の方向にそれぞれの自宅があるため、そこで別れることになる。野球部の練習で疲れてる彼に無理はさせられないので、当然駅からは一人でバスに乗って帰ることにしている。

 とはいえ、最寄りのバス停が自宅から離れてることもあって。その道のりのことを、曽根は心配してくれているのだ。

 なので一緒に帰れるのはわたしが部活で残る日と、野球部がミーティングだけで早く帰れる日。火木金の三日間に限定されている。ちなみに今日は月曜日。いつもならほどほどに見学をして、先に帰る予定なんだけど。

 それを聞いた冴香は何とも言い難い、変なカオをした。

「保護者か、アイツは」

 そう呟いて、袋の中身をジャグに開ける。そして蛇口をひねった。

 勢いよく、水が流れ出る。

 それを何となく眺めていると、再び彼女が口を開いた。


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