連鎖する僕ら 4
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 ――うん、だからね。そういう顔されるとさ。期待しちゃうんだよ。



(……参った)

 放課後、図書室に向かう道すがら、俺――間宮哲はそっとため息をついた。

 ため息の原因は、アレだ。今朝、一緒に登校してきた現在絶賛片恋中の相手・藤原冴香サンに関すること。

 藤原に惚れたと自覚してからこっち、俺の目には彼女がやたら可愛く見えて仕方なかった。そりゃもう、何の病気ですかってくらいに。どうして今まで何とも思わなかったのか、我ながら不思議なくらいだ。

 俺が告ってからというもの――藤原は急に挙動不審になった。一応、表面上はこれまでと同じように振る舞ってるつもりらしいけど、見る人間が見れば取り繕ってるのなんかバレバレだったりする。

 元々、藤原はあまり物事に動じない性格だ。いつでも誰に対しても、平淡なテンションで接してるから、友達の瀬戸に比べたら表情の変化は乏しいほうだと思う。あいつのテンションが上がるときは、部活のときか、何か企んでるとき。あとは説教モードのときで――周りから見たあいつの評判は常に『野球部の、しっかりした女王様マネジ』だった。それは今でも、変わっていない。ていうか、変わってないと思いたい。

 最近の俺の悩みの種。それは、藤原の女王の仮面が剥がれつつあるということだ。別に俺は藤原が女王様だろうが、そうでなかろうが、好きなことに変わりはないんだけど。でも何ていうか最近――隙だらけなのだ、藤原は。

 以前の偉そうな佇まいはどこへやら。難しい面持ちで考え込んでたり、物憂げな表情でため息ついてたり――元の顔立ちが整ってるもんだから、そういう姿がやたら絵になってて。それを見るたびに、俺は何となくやきもきした気分になる。

 まぁそれだって、俺が「好きだ」って言ったのが原因なんだから仕方ない。あいつがそれだけ真面目に考えてくれてるってことだ。だから本来なら嬉しいはずなんだけど、やっぱ不安になるんだ。元々モテていた彼女が変化することで、更に競争率が上がるんじゃないかって。


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