さくら、ひらひら 3
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 あの人とお別れしてから、二度目の春がやって来た。



「綺麗だねー」

 薄紅の桜の花びらが散る中、美希ちゃんが天を仰いで嬉しそうに言った。つられたわたしも、笑顔で口を開く。

「そうでしょー? ここは昔っからのオススメの場所なんだ」

 その言葉に美希ちゃんは何度も頷いて、また桜へと目を移した。そして、呟く。

「ホント……綺麗だぁ」

「気に入ってもらえて、よかった」

 彼女の満足げな反応に、案内してきたわたしは安心して胸を撫で下ろした。



 放課後――わたし達がやってきたのは、花見客で賑わう駅前の商店街だった。この商店街と交差する形で川が流れてて、それに沿って桜の木が植えられている。電車から見ることもできて――確か五・六駅分くらいの距離、続いているはずだ。それでも、いちばん賑やかで華々しいのはこの辺りで。

 毎年この桜が咲く時期を狙って、商店街では縁日が開かれている。休日には『さくら祭り』と銘打って、催しがあったりもするのだ。

 日の入りまであとわずかという時間帯――学校や仕事から帰ってくる人だけでなく、夜桜を目当てにやって来る人も沢山いて、商店街はいつも以上の賑わいを見せていた。そんな中、わたしと美希ちゃんは川沿いにあるベンチに腰掛けている。

 わたし達の間では、さっき出店で買ったばかりのたこ焼きとじゃがバターが、ほかほかと湯気を立てている。そして、それぞれの手にはホットのカフェオレ。『花より団子』ってわけじゃないけど、花だけで満足できるようなお年頃でもない。そんなわけで、食べ物もちゃんと調達しての即席の花見会になったんだけど。

 春とはいえ、日が落ちればやっぱり肌寒い。手にしたカフェオレで暖を取りながら、わたしは美希ちゃんと顔を見合わせた。

「それじゃあ」

「いただきまーす」

 二人、口元に弧を描いて食べ物に手を伸ばした。久しぶりに食べる定番の縁日メニューはこういう所で食べるせいか、思っていたより美味しく感じた。

 まだ中身が熱いたこ焼きに苦戦しながら、美希ちゃんが口を開く。



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