私がそのあと苦労したのは言うまでもない。なぜなら両足を捻挫しているから。
紺炉さんに歩かない方がいいが必要ならと支給してもらった松葉杖と、"どちらかといえばまだマシ" な左足を使い、風呂場から部屋までゆっくり戻る。
入浴にはいつもの倍の時間がかかった。
今日は浴衣ではなく、持ってきた黒のTシャツとグレーのハーフパンツを着た。これなら身体が痛くても着替えがまだ楽だし、ハーフパンツなら両足をなるべく動かさずに履くことができる。
そういえばヒカヒナは近所の夕涼み会に出かけているらしく、第七はやけに静かだった。
はやく部屋に戻って座りたい。
松葉杖を使ってほぼ無理やり歩いている所為で両足首がズキズキと痛む。
「なんで出歩いてんだ」
ようやく廊下の角を曲がったところで背後から声がした。ーー振り向かなくても誰だか分かる。微妙に圧を含んだこの雰囲気。新門さんに違いない。
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「お風呂です」
ナナが廊下を歩いていることに、新門は音で気づいていた。松葉杖を使って無理やり歩いている所為だ。
「髪乾かしてねェのか」
腕を組み、ナナの背中を見下ろす。
松葉杖に体重をかけて寄りかかっているが、痛みからか軸にしている左足が時折小さく震えている。髪も濡れたままだった。
「これから部屋で乾かします。…………新門さん、昨日は………え…っ……」
諸々察した新門はナナを軽々と抱き上げ、そのまま歩き出す。ナナが持っていた松葉杖は廊下に立てかけて。
「え、あの、松葉杖…………」
「動くんじゃねェ、足に響くぞ」
「や、だから松葉杖」
「今は要らねェ」
「……………」
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