纏に着火した炎を操り、新門は瞬時にナナの元へと飛んだ。
稽古では精密に動物や武器を再現していた筈の炎は今、背後でドロドロと燃えているだけで、発火させている本人は秒単位で氷に身体を蝕まれている。
ーー "オーバーヒート"
新門の脳裏には、嫌でも思い出される "あの日" の光景と後悔。
新門がナナの目の前に着地した衝撃で氷が吹き飛ぶが、ナナ自身の身体を侵食する氷は止まらない。
光を映さない、虚な銀色の瞳。
ナナは背後でドロドロと燃やしていた炎を放つことはなかった。何故ならその時点で半分以上気を失っていたからだ。
「………」
バキッ!!!
新門はナナの身体を覆っていた氷のみを破壊し、そのまま倒れたナナを片腕で支えると、膝に手を回して抱き上げる。身体は氷のように冷たかった。
額から頬、首にかけて乾いた血が張り付いているナナの整った顔に、自分が破壊することしかできない人間であることを思い知らされる。
相手が空を飛べるナナ故に空中で技を交わすことが多かったので、町への被害を最小限に抑えられたのは大きいが…………たかが喧嘩で数軒の破壊してしまったのも事実。
あとで言い訳と修復作業を手伝うとして、取り敢えずナナを詰所に運ぶのが先だ。
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