浅草の空、炎がぶつかり合うーー。
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ーーこの女、なかなかやりやがる。
俺が初手で飛ばした火の弾を顔で避けた上に、すかさず技を食らわせても、さっきここに来た時と変わらねェ無表情で相殺しやがった。
「やるじゃねェか」
「ありがとうございます」
それに加えてコイツの第三世代能力。確かに他に類を見ない強力な能力だろうな。
「お前、目が良いな?………視力的な意味じゃねェぞ」
「視力は普通です」
「視力的な意味じゃねェって言ってんだろ」
鳥とも蝶とも見てとれる、馬鹿デカイ炎の翼を背に空中を飛びながら、俺が立つ屋根の上に炎の犬どもを放つ。この犬っころどもは、まるで一匹一匹に自我があるような複雑な動きをしやがるが、そういうわけじゃねェ。まずそんなことはできねんだ。
「どうでしょう、そんなの考えたことなかったです」
「そうかよ」
恐らくアイツはその気になれば生物だろうがなんだろうが、炎で他の形のモンをいくらでも作れる。なぜならアイツの背中で燃える炎の大翼も、この炎の犬っころどもも、アイツの想像を形にしたモンだからだ。
なら、視界を奪うか、この再現度を維持する為の集中力を奪うかで状況は一変するはずだ。
だが初っ端から馬鹿デケェ炎の大翼で飛び、その最中に他の動物も出せるようなヤツだ。オーバーヒートは狙えねェだろうな。
「遠距離戦じゃラチがあかねェ………か」
ーーー 新門は指先で燃やしていた炎を消すと、一気にナナの間合いまで距離を詰めた。
「(……すごい殺気)」
それはまさに本気。
ナナの視界を奪おうと、ナナの目の前の空気を新門の手が横一文字に切り裂く。ヒュン、と空気を切る音がした。
「オラどうした!避けるだけじゃ、俺は仕留めらんねェぞ」
連続して繰り出される拳と脚を後ろに下がりながら避けるナナ。屋根の終わりまで追い詰めても、新門はその手を緩めるつもりはない。
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