「次だ。ナナ、第五の彼の相手をしてやりなさい」
「はい」
ナナが前に出ると、後ろから「ナナはウチのエースだぞ!」とレッカのエールが聞こえた。
相手となる第五のトオル・岸里、実は先程の闘いを見たからかやる前から逃げ腰で辞退しようとしていた。けれども結局やる事になってしまったのは、「ならばハンデを付ける」と大隊長直々に提案されたからだった。
「ナナは君たちと同じ、第三世代の能力者だが、2ヶ月ほど前に第二世代の能力にも目覚めていてね。今はその訓練中だが、実戦で使えるレベルには達していない」
「(…第三世代が……第二世代の能力にも目覚めた?)」
当然それを聞いて驚いているのは、これから対戦するトオルだけでなく他の新人も同じ。
「ナナは使い慣れた第三世代の能力を使えるのは一度だけ。あとは第二世代の能力で闘う。それでいいね?」
「構いません」
「…まぁ……その…がんばります?」
そこまで言われてはやらないわけにはいかない。
美人だが何を考えているのかさっぱり読めないナナの数メートル前に岸里は立った。
そんな条件を出されたナナを、他の人間とは全く別の角度から見るのはカリムだ。
同じ第二世代能力者で、やることも似ているカリムは、ナナに能力コントロールの指導もしていたが、何度教えても上手く行ったことはなかった。
「よし、はじめろ」
ーーその原因が何かを、カリムにはもう分かっていた。本人は「難しい」と誤魔化していたが、本当の原因はナナの中にある恐怖心だ。
「じゃあ…遠慮なく!」
先手を打ったのは岸里だ。予め口の中で小さく膨らませておいたガムにもう一度穴を開け、数個の風船を間髪入れずに口から放つーー。
「………」
その全てがフワフワとナナの元へと向かい、爆発しようとした瞬間だった。
突如ナナの周りを高速で旋回しながら現れた炎が大蛇の形へと変化し、風船を一気に呑み込んだ。
的確かつ最短。そしてまさに自在の炎。
新人達は口を開けて驚いている。
ナナはこれで一度きりの切り札を使い果たした。次に見られるのは第二世代の方のチカラ。周囲の期待が高まる。
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