風船ガムが爆発する瞬間に凍らせばいい。
風船ガムが爆発する瞬間に凍らせばいい。
風船ガムが、ーー。
「ーーー。」
頭をよぎるフラッシュバック。
爆発する風船は目前に迫っているのに、ナナはピタリとも動かない。
ーーーあの日、凍りついた右手。そこから這い上がるように氷が体を蝕んだ。
「……っ…!」
ーー蟲を見たから。蟲、…蟲………焔人…恐怖……炎……こわい……….真実…残酷……人工の焔人……犯人は………二人のどちらか………ーーー。
銀色の瞳が光る。今までにない強さで。
誰かが叫ぶ声がする。
危ない、避けろ、何やってんだって。
ーー嗚呼、そんなの分かってる。
「はやくみつけないと」
ドォオオオオン!!!!!!
「ナナ小隊長!!」
タマキの声が聞こえた。
顔と身体の直前で、すべての風船ガムは爆発した。
・
・
シュー…。
爆発でおこった煙を不安げに見つめるのは対戦相手のトオルだ。相手は第一のエース。ハンデとはいえ絶対に避けるだろうと思い、本気でやった。
…5秒、7秒、10秒ーー。舞い上がる煙の中から、ナナはまだ出てこない。
痺れを切らしたのはシンラだった。ぺたぺたとサンダルで舞い上がる煙の近く行くと、踵から炎を出し、蹴る勢いで一気に煙を消しとばす。
「……なっ…!?」
煙が晴れたそこにあったものは、氷ーー。
ジャガーノートくらいの高さに、幅1.5〜2メートルほどの大きな氷の塊があった。分厚くてハッキリとは見えないが、中に動かなくなったナナがいるのは確認できた。
そして、こちらへ来た大隊長が氷の塊に手を触れる。その後ろには三人の中隊長とタマキもいた。
ーー直後、大隊長がふれた部分の氷が一瞬にして砕け落ちた。中から気を失った状態で出てきたナナの体を支えたのはカリムだった。
「中で自分が動ける分の空間を作らなかったせいで呼吸ができなくなり、気を失っただけだ。爆発はひとつも当たってない。心配するな。
ーーナナはまぁ、少しはマシになったか」
ある意味嫌味ともとれる気遣いに、タオルよりもシンラの方が腹が立つ。
「医務室に運んできます」
「頼むぞカリム」
レッカに頷き、カリムはナナを抱えてその場を去った。
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